めざすのは「存在感のない字幕」 ある韓流翻訳家の境地

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田中瞳子
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 共に恋をし、復讐(ふくしゅう)に燃え、厚い友情に涙して――。コロナ禍にあって、韓国ドラマは多くの人をとりこにしました。フリーの映像翻訳家の福留友子さん(52)は、「第4次韓流ブーム」を支える立役者の一人として、韓国ドラマ映画日本語字幕や吹き替え翻訳を手がけています。仕事の裏側や、目指す名翻訳などについて、福留さんに聞きました。

心にはいつも、締め切りが

 電車に乗り遅れる。目的地になかなか着かない……。福留さんがよく見る夢だという。「お酒を飲んでいても、海外旅行に行っていても、いつも心の片隅に締め切りがあるせいかな」

 毎朝4時に起き、午前0時に寝る。ほとんどすべての時間を自宅の仕事部屋で過ごす。昨日は政治がテーマの作品、今日はラブコメに歴史もの……。最近では、動画配信大手のドラマや映画の字幕・吹き替えにも携わり、週3~4本の翻訳をこなす。

 韓国ドラマは、日本のドラマに比べて長い。最近は、1話60~80分×16話のものを、別の翻訳者とペアで担当することが多い。韓国と同日配信するドラマも増えており、納期までのスピード感は増している。

 ハングルに初めて触れたのは、小学4年生の頃だった。母がプレゼントしてくれた韓国の翻訳本に、原文が書かれていた。○や□でできている。図形みたいな文字だった。何度も書き写した。「まったく読めない。でもこれを使っている人たちがいるのかと思うと、言葉も、人も、知りたくなりました」

冬のソナタ」をきっかけに

 大学院を修了後、大手進学塾で塾講師をしながら翻訳会社のトライアルを受け、副業で翻訳を始めた。当時はまだ韓国語翻訳の仕事は少なく、英語のビジネス文書などの翻訳がほとんどだった。

 NHKが2003年に放送し…

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