父失った過去を明かした労働局長 異例の会見で呼びかけ

北沢祐生
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 「自分のことを言うのは何ですが……」。長野労働局の小野寺喜一局長(59)が28日の定例記者会見で、そうためらいながら父親が仕事中に亡くなった過去を明かした。異例ともいえる言及は、長野県内で急増する労働災害事故の防止につなげたいとの思いからだ。

 小野寺局長は4月から現職。この日の会見で、近く50回忌を迎える父親のことを語り始めた。

 宮城県気仙沼市の遠洋マグロ船の漁師で、一度出港すれば4、5カ月間は戻らなかった父。局長が10歳の時、ハワイ沖で操業中に発生した船内の火災で、父親も含め乗船していた二十数人のほとんどが亡くなったという。

 「働いている人の健康や思いを大切に、一番国民のそばにある仕事と考え、この職を選んだ」。そう語った小野寺局長は、この日の会見のために「これ以上の死亡災害を発生させないために」と題したA4判1枚のメッセージも用意した。

 今年の長野県内の労災死傷者(休業4日以上)は4月末時点で609人に上り、前年同期より約3割増加。このうち死亡は9人で、前年同期の3倍、昨年1年間の死者(16人)の半数を超えている。

 「仕事で命を落とすことは決してあってはならない」。そうつづったメッセージで、小野寺局長は「死んでしまったら何も意味がない、安全・安心に働ける職場こそすべての基本」との価値観で約40年間、労働行政に携わってきたとし、「一人一人の働く人の向こうには大切な家族や仲間がいて、たくさんの笑顔がある。大切な人が突然いなくなること、それは想像するだけでもつらさがこみ上げる。だから(労災による死者)ゼロを目指したい」と訴えた。

 労働局によると、今年発生した労災事故全般では墜落・転落、転倒など従来型のものが多く、担当者は「(死亡事例では)事業者側の安全対策の不備などが半数近くを占める」と話す。発生ペースは年間の死者が32人となった2004年に匹敵し、「非常事態ともいえる」という。労働局は、準備期間が6月が始まる「全国安全週間」で事業所への指導を強化していく方針だ。(北沢祐生)