第12回歴史家がナウシカに見た独ソ戦 人の本性への冷徹な認識

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太田啓之
写真・図版
コロナ下で読み解く 風の谷のナウシカ
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 漫画版『風の谷のナウシカ』は、戦争を正面から描いた物語でもあります。映画版には登場しない帝国・土鬼(ドルク)とトルメキア王国が血みどろの大戦争を繰り広げる中、小国「風の谷」のナウシカも戦いに加わらざるを得ません。生々しく、凄惨(せいさん)な戦争描写を通じて、宮崎駿監督は何を伝えようとしたのか。ベストセラー『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』などの著書がある現代史家の大木毅さんと考えました。

クリミア戦争や城塞作戦を連想したナウシカ世界の戦い

 ――漫画版『ナウシカ』に描かれた戦争と現実の戦争との接点をどう見ますか。宮崎駿監督自身は「独ソ戦(第2次世界大戦中、ドイツとソ連が戦った戦争)がモデル」と発言していますが。

 「後でお話しするように、独ソ戦的な面は確かに強いのですが、具体的な戦闘場面では、宮崎監督は古今東西の様々な戦いを参考にされているという印象を受けました。例えば、単行本の第3巻で、包囲されたクシャナ軍がナウシカと共に敵陣を急襲する場面。騎兵の前進に合わせて、味方の砲兵が絶えずその前面に弾幕を張り、掩護(えんご)するシーンがあります。これは『移動弾幕射撃』と呼ばれ、第1次世界大戦の時に確立した戦法です」

 「技術の進歩で火砲の性能が向上したことによって可能になったのです。一方、現実の第1次世界大戦では騎兵はほとんど強襲突撃できませんでした。騎兵は火器に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)だからです。それでも、ナウシカの世界では騎兵が活躍できているのはなぜか」

 「そう考えた時に思い至った…

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