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育児漫画の出版ダメ 高校教員、兼業不許可巡り都を提訴

フカボリ

田中恭太
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 都立高校の教員が男性の育児参加を促す漫画を出版しようと、都教育委員会に「兼業」を申請したところ、理由を示されず不許可にされたとして、都を相手取って取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。自身の育児経験をツイッターに投稿したエッセー漫画が人気を集め、出版社から書籍化を打診されていた。

 男性は提訴の理由について「兼業や教員の働き方について、考えてもらうきっかけになれば」と話す。都教委は訴状が届いていないとして訴訟に関するコメントは控えるとしている。

 男性は30代で都立高校の教員。ツイッターやブログで「パパ頭(あたま)」(https://twitter.com/nonnyakonyako別ウインドウで開きます)の名で投稿をしている。

 3歳の長男「にに」と、1歳の次男「とと」の育児に妻とともに励む日常を描く作品が共感を呼び、フォロワーは現在約8万4千人。1作品に10万以上の「いいね」がついたこともある。

 男性によると、漫画は2017年、育児休暇中に描き始めた。復職後も子どもが寝静まった後の1~2時間ほど、趣味として続けている。

 訴状などによると、大手出版社から書籍化の打診を受けたのは昨年3月。男性の育児参加を促すなど自身の経験が役立つと考え、同8月に校長に相談した。

 都立高校の教員は地方公務員。報酬が発生する業務に公務員が従事する場合、教育委員会の許可が必要とされる。今回、漫画を出版すれば印税が生じる見込みだった。

 都教委によると、兼業許可は2019年度で約1200件あり、教科書の執筆や講師などが代表的な例という。

 訴状などによると、校長は許可相当の意見をつけ、申請書を都教委に提出した。

 だが、申請書はそのまま返却され、申請そのものがなかったことに。不許可通知も受け取れなかった。

 男性は許可の判断基準が知りたいと、都教委側に手紙を書いた。約1カ月後、「判断基準に基づいて判断している」という趣旨の返事があったが、具体的な基準や、認められなかった理由は示されなかったという。

 弁護士の助言も得て再び申請書を提出したが、今度も校長から口頭で「不許可」と伝えられた。

 今年2月に都人事委員会に対し、不許可処分を不服として審査請求。並行して、今月、不許可処分の取り消しなどを求めて東京地裁に提訴した。

 男性は「子どもに色々な働き方や価値観などを見せたり、教えたりしていくことを考えると、教員にもう少し自由な働き方が認められる余地はあるのではないかと思う。多くの方に関心を持っていただき、一緒に考えて欲しい」と話す。

 不許可とした経緯について、都教委職員課は28日、朝日新聞の取材に「(申請を担当する都教委の)学校経営支援センターが申請内容に再考を求めるため、校長を通して書類を差し戻した」と説明。再考を求める差し戻しで不許可とした理由については「(不服審査請求の)手続きが十分に進んでいない段階なので、お答えいたしかねる」とした。

 理由を教員に説明したかについては「(センターが)校長に説明したと認識している」とした。提訴については「現時点で訴状が届いていない」と話した。田中恭太

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