使おうと思っても偽名ばかり 司法取引、導入3年で3件

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川嶋かえ、原田悠自、三浦淳、金子和史
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 捜査に協力する見返りに自らの刑を捜査当局に減免してもらう「司法取引」制度が、6月1日で開始から丸3年を迎える。この間の適用は計3件。当初見込まれた組織犯罪や汚職事件の摘発にはつながっていない。4年目に入る制度はこれから根付くのか、見えてきた課題を検証した。(川嶋かえ、原田悠自、三浦淳、金子和史)

 「(司法取引に基づく供述は)信用性の判断に際して相当慎重な姿勢で臨む必要があり、争点の判断材料として極力用いない。客観的な裏付け証拠など、動かしがたい事実関係を中心に検討する」

 今年3月、司法取引制度の適用3例目となった業務上横領事件の判決。東京地裁は有罪を導きながら、不起訴と引き換えで得られた供述だけでは判決が左右されない姿勢を明確にした。

 検察内は少なからずざわついた。中堅の検事は「当初から言われていたことだが、改めてこういう判決が出ると、やはり適用を躊躇(ちゅうちょ)してしまう」と話す。

 司法取引の導入が検討された2014年の法制審議会の特別部会では、最高裁の当時の刑事局長が「第三者に罪を負わせた供述者に利益を与える」ことをシステム化する制度だと指摘。虚偽の供述を防ぐ手立てが不十分で、「裁判所は最初から信用性に疑問を持つことになる」と語っていた。

 適用2例目として日産のカルロス・ゴーン元会長を逮捕した事件でも、裁判長は検察、弁護側との事前協議で「証人の証言は慎重に判断する」との意向を示した。共犯とされた元役員も、司法取引した元秘書室長らの証言を現在進行中の公判で次々否定している。

 司法取引の適用について検察は、東京地検特捜部→大阪と名古屋の地検特捜部→他の地検の特別刑事部→警察へと順次広げていく予定だった。だが、実際は東京地検特捜部での3件にとどまる。「使った人が少なすぎて使ってみようと思わず、全然広がっていない」(検察幹部)状態だ。

「上はこいつです」取引持ちかける受け子

 司法取引はもともと、暴力団が絡む特殊詐欺、薬物・銃器といった組織犯罪や、贈収賄や脱税といった経済犯罪などを主な対象として設計された。末端の実行行為者らは免責してでも、協力を得て首謀者や指示役などの「巨悪」を処罰するのが狙いだ。

 「上はこいつです」。捜査関…

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