女性ツートップの町議会 「女に何ができる」から28年

編集委員・石橋英昭
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 宮城県の柴田町議会で4月、高橋たい子さん(72)が議長に再選され、副議長に平間奈緒美さん(52)が新たに就いた。女性がツートップの町村議会は全国2例目、市議会を合わせても珍しい。桜で知られる人口4万人弱の地方都市で、女性たちはどうやって壁に穴を開けてきたのか。

 時計の針を1990年代まで戻そう。

 合併で柴田町ができて第1号の女性議員が、1993年にやっと誕生する。元美術教師で、町で様々なボランティア活動をしていた加茂紀代子さん(82)だ。

 定数26中ただ一人。「男性議員も役場職員も、『女に何ができる』って見てました。だからお酒の席も断らず、どんな会合にも出て勉強した」。4期務めた加茂さんは振り返る。

 一般質問で女性施策推進を迫った加茂さんに、平野博町長(当時)が応えた。翌94年、女性政策係を新設する。係長に起用された加藤陽子さん(72)の提案で、まずは慣例だった女性職員による「お茶くみ」が廃止された。

 加藤さんは、まだ少なかった大卒の女性職員。「なのに、配属された税務課では申告の担当をさせてもらえず、お茶くみや単純な事務仕事ばかり。ずっと疑問に思っていた」

 町はその後、矢継ぎ早に施策を打ち出す。女性問題を巡る会議がいくつも立ち上がり、地域の女性史の編纂(へんさん)が始まった。小中学校では男女平等を教える副読本や、県内初の男女混合名簿がつくられた。

 「『男女共同参画』を政府が言い始め、時代の風が吹いていた。それに町長が飛びついた」と加藤さん。政府が呼びかけていた「男女共同参画都市」も98年に宣言した。これも県内で最初、東北3例目だった。

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 女性の政治参加を進めようと、町が96年に企画したのが「女性模擬議会」。各分野から選ばれた女性たちが議場に並び、町執行部に疑問をぶつけた。その一人が今の議長の高橋さんだ。「同級生だった加藤係長に数あわせでひっぱりだされたのよ」と笑う。

 当時は夫と共稼ぎで農協勤め。自ら認めるでしゃばりだが、男社会の窮屈さを感じていた。PTA活動では「上に立つのは父ちゃんじゃなきゃ」と尻込みし、副会長に甘んじた。選挙のたびに親戚じゅうの男たちがハッスルするのも、嫌でたまらなかった。

 そんな高橋さんがいつのまにか周囲に推され、2009年の町議選で初当選。このとき女性議員は6人に増え、定数が18に減ったこともあって、3分の1の勢力になった。

 いざ議会の中に入ってみて、高橋さんは驚いた。ともすれば前例踏襲、シャンシャンで物事が決められてゆく。「女性が入る会議は時間がかかる、って言った人がいたけれど、おかしいと感じたことは、声にしなければ変わらない」

 4年前、3期目で議長になると、議会改革に手をつけた。議員同士がワークショップで話し合うワールドカフェ形式をとりいれ、地元の高校生との意見交換会も開いた。再び議長選を勝ち抜いたこの春からは、副議長の平間さんと改革の仕上げにかかる。

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 高橋さんも平間さんも、「男か女かなんて、もう意識しない。自然体です」と強調する。

 町役場の女性政策係は廃止され、ここ10年ほどは目立った女性施策もない。今では班長(係長)以上の幹部職員の3分の1を、女性が占める。先頭ランナーで走ってきた結果、柴田町では女性の社会参加が、それなりに前進したと言えるのかもしれない。

 一方で、なお立ちはだかる壁も見えてきた。

 今年3月の町議選は無投票で決まった。引退議員の後継者が見つからず、女性は4人に減。男も女も、議員のなり手がいないのが最大の問題だ。

 「私たち議員が、もっともっと住民の間に入らなきゃダメ」。高橋議長は反省を口にした。(編集委員・石橋英昭

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 全国町村議会議長会の昨年7月時点の集計では、全国926町村の女性議員の割合は11・2%。市議会は16・8%だから、さらにギャップは大きい。町村議長のうち女性は30人、3・2%だけ。群馬県玉村町議会でも、女性が正副議長を務めている。

 宮城県内21町村の女性議員は計33人、11・0%。多いのは山元(定数13)と柴田(同18)の各4人で、蔵王、七ケ宿、村田、松島4町はゼロ。女性議長は柴田の高橋さんだけだ。

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