食品ロス対策、行政でも民間でも 静岡

須田世紀
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 【静岡】まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の削減に向けた関心が高まっている。行政だけでなく、民間にも取り組みは広がりつつある。

 消費者庁によると、2018年度の国内の食品ロスは、推計600万トン。飢餓に苦しむ人々に向けた国連世界食糧計画(WFP)の食料援助量(約420万トン)の1・4倍にあたる。国民1人当たりでみると48キロにのぼり、コメの消費量(54キロ)に相当する食料がまだ食べられるのに捨てられている計算という。

 対策として、県は16年度から「ふじのくに食べきりプロジェクト」に乗り出している。食品のほか、衣料なども含めた一般廃棄物の1日1人当たりの排出量を13年度実績の917グラムから815グラム以下にすることが目標。食べきれる量を意識した「適量注文」などの実践を呼びかけている。

 NPO法人「フードバンクふじのくに」(静岡市)は14年から、企業や団体、個人から食品を集めて生活に困っている人に提供する活動に取り組んでいる。初年度は計14トンの食品が集まり、367件の福祉施設や生活困窮者の支援団体などに届けた。17~18年度には約55トン、2900件に広がり、コロナ禍に見舞われた20年度はさらに91トン、約6400件に急増。食品ロス削減への取り組みは着実に民間に浸透している。

 静岡市駿河区にある大型リサイクル店の一角約100平方メートルに、カップラーメンやお菓子、清涼飲料水、缶詰などが大量に陳列されている。DVDやゲーム、おもちゃなどのリサイクル店を県内で6店舗を展開する「静岡鑑定団」の新業態「しずおか食品市場」だ。コロナ禍による1度目の緊急事態宣言が出された後の昨年6月にオープンした。

 並んだ賞品は、おいしく食べられる「賞味期限」切れが迫っているものや、賞味期限は切れたもののまだ安全に食べられるものばかり。鑑定団各店の統括責任者の半田稔詞さん(43)は「食品が廃棄されるニュースを見る一方で、知人は雇い止めにあって食べるものに困っていた。それが開業を思いついた理由の一つ」と言う。

 商品は問屋などから仕入れていて、オープン当初にはお土産店がキャンセルしたらしく行き場を失った菓子を大量に引き取った。値引きの幅は、缶詰や飲料、菓子などの種類や食べることができる期間、仕入れ量によって変わるが、消費期限が迫ったチューブ入り調味料を99%引きで店頭に並べたこともあるという。

 リサイクル店は常連だという地元の会社員男性(47)は初めて食品市場に足を踏み入れ、「なんでこんなに安いんだろう」と思った。安全だが賞味期限が切れていると聞くと、「全然気にならないよ」と話し、普段ならば手を出さないような高級ジャムの瓶を3本手にしてレジに並んだ。

 食品市場の売り上げはまだまだの状況というが、半田さんは「来てくれたお客さんは喜んでくれている。今後は規格外で廃棄される野菜も扱ってみたい」。今年4月には同市清水区に2店舗目をオープンさせた。

 消費する側だけでなく、生産者側の意識も高まりつつある。

 「肥料を買って作ったもの。皮をむいたり、規格外だから捨てたりするのは、もったいないじゃん」。そう話すのは、浜松市北区でネギを中心に栽培する農業法人の専務、神谷光男さん(47)だ。神谷さんの場合、作物の2割程度を出荷前に廃棄しているという。低収入や重労働を理由に多くの農家が担い手不足に悩んでいることも心配だ。

 通常ならば捨ててしまう廃棄作物を有効活用しようと、8年ほど前、大学教授や専門家から学んだ化学の知識を生かし、余った食品などを乳酸菌で発酵させ、液体肥料を作る方法を確立した。液体だと、従来のペースト状の肥料より散布作業が楽で肥料代も抑えられる、と見込んでいる。

 給食センターや食品加工会社から廃棄食品を集めて液体肥料化し、農家がそれを使う。出来た作物を給食センターや食品加工会社が使う。そうした循環作りを目指している。

 神谷さんは「再利用したものを使えばイメージアップにもつながる。リサイクルのループが続きやすくなるはず」と期待する。(須田世紀)