福井県内の聖火リレー、日程を終える

柳川迅、堀川敬部 佐藤常敬
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 東京五輪聖火リレーは30日、越前市を出発し、池田町、大野市などを経てゴールの福井市中央公園に到着した。2日間で181人のランナーが聖火をつなぎ、全17市町を巡った。聖火は31日に石川県に引き継がれる。

 越前市では武生中央公園で出発式があった。式に先立ち市内のダンス教室「みんなのスタジオハピネス」の生徒がチアダンスなどを披露。式では奈良俊幸市長がこの日の第1走者でフェンシング女子エペの東京五輪代表の佐藤希望のぞみ)さん(34)のトーチに点火した。

 佐藤さんは同市出身で、2児の母。2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪にも出場し、3大会連続で日本代表になっている。佐藤さんは「すごい声援を受け幸せな時間だった。ベストパフォーマンスをしてメダルを持って帰ってきたい」と話した。

 越前市内を走ったランナーの一人、同市の小形千英子さん(73)は車椅子で参加した。病気のため車椅子を使うようになり14年以上になるという。小形さんは「私でも参加できたことはすごく大きい、主人も一緒について参加できた。うれしくて今日の天気のように最高だった」と語った。

 永平寺町では、県内ランナーの最高齢者、天土博視(あまつちひろみ)さん(89)が約100メートルを走った。70年以上マラソンを続け、県内外の大会にも数多く出場してきたが、高齢で家族らが心配するため、聖火リレーを最後に大会への参加を引退することを決めた。「まさかこうして終止符を打てるとは考えてもみなかった。夢に見たようです」と目を細めた。

 福井市内を走った知的障害者の女子バスケットボールチーム「フクイサンダーズ」の副キャプテン、上嶋ちひろさん(21)は、応援してくれた家族や職場の同僚、コーチらに感謝の気持ちを伝えたいと応募。笑顔で受け持ちの区間を走りきった。

 県内での最終ランナーは福井市出身の俳優津田寛治さん(55)が務め、ゴールの福井市中央公園に入ると、大きな歓声と拍手が上がった。津田さんは「みなさんと力を合わせて、家族みたいになれた。参加できてよかった」と話した。(柳川迅、堀川敬部)

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 福井県あわら市内を走った米島学さん(66)は、同県敦賀市の市立敦賀病院管理者を務める消化器内科医。この1年、新型コロナウイルスへの対応に追われてきた。

 石川県出身。病院長を務めた後、2016年に管理者に。敦賀と美浜、若狭の近隣1市2町で唯一の総合病院を束ね、患者と職員の絆、開業医と介護施設など地域との連携を大事にする信条を貫いてきた。65歳で定年退職するか、地域医療のためもうひと踏ん張りするか迷った時、自分を奮い立たそうと聖火ランナーに応募した。

 だが、高揚感の一方で、「仲間がコロナと闘っている時に走って良いのか」と日々悩んだ。病院はコロナ患者だけでなく救急患者を受け入れる地域の中核病院。もし院内感染が起きれば救急や外来の患者を受け入れられなくなり、地域医療が崩壊する。限られた人員での綱渡りにワクチン接種も加わり、現場の負担はさらに増している。

 葛藤する米島さんの背中を押した同僚のひとりがコロナ患者を担当する看護師田中恵実さん(45)だ。「正直、五輪を開く時なのか、複雑な思いもある。でも米島さんが走ることが希望になり、一歩先に進むことにつながる」

 この日、沿道には日頃支えてくれる家族や病院の同僚の姿があった。大役を終えた米島さんは「コロナと闘う仲間を代表して走りました。ありがとうございました」と話した。「全国の人がコロナでつらい思いをしている。それでも一人ひとりが希望を持って前に進みたいという思いを込めて走った」という。最後、次の走者とのトーチキスでは「日本頑張れ」とかけ声を上げた。「コロナに負けるな」と力を込めた。(佐藤常敬)