繰り返される豪雨の逃げ遅れ、避難情報はなぜ届きにくい

有料会員記事

神元敦司
[PR]

 異例の早さで西日本は梅雨入りし、日本列島は本格的な出水期を迎える。近年は雨の降り方が激甚化、局地化し、毎年のように豪雨災害が起きている。そのたびに指摘されるのが避難の遅れだ。市町村が住民に避難を促すために発表する避難情報は、なぜ届きにくいのか。

「何しよる、早う来い」と防災会

 2018年7月の西日本豪雨広島県三原市では21人(災害関連死を含む)が亡くなった。中心部から北西に約10キロの、なだらかな山と田畑に囲まれた高坂町地区。ある住民の男性(74)の自宅近くでは、すぐ脇を流れる仏通寺(ぶっつうじ)川があふれ、近くの護岸が40メートルほどごっそり崩れた。

 7月6日夜、市内全域に避難指示が出たことは、男性はテレビを見て知っていた。部屋から懐中電灯を照らし、仏通寺川があふれているのを見た。川の石と石がぶつかり合う音も聞こえ、やがて水が庭に流れてきた。

 「何しよる、早う来い」。自主防災会の役員に避難するよう促されたが、男性は田んぼの様子を見て、過去の経験から「まだ大丈夫」と家にとどまった。

 家屋への浸水は免れたが、庭は40センチほどの高さまで泥水につかった。

 男性だけではない。三原市と東京の民間調査会社「サーベイリサーチセンター」が、避難指示を受けていた市民から無作為に1200人を選んでアンケートしたところ、75・4%が避難していなかった。

 避難しなかった理由は「自宅・職場にいても安全だと思った」が65・4%と最も多かった。「避難した経験がなかった」(33・6%)、「近所の人も避難していなかった」(22・6%)が続いた。「警報や避難の情報を見聞きしたが、どうすればいいか分からなかった」という人もいた。

情報で人は動かないのか

 避難指示などはなぜ伝わりにくいのか。関西大社会安全学部の元吉忠寛教授(災害心理学)の答えは「人間は情報に基づいて行動することが苦手だから」と明快だ。「情報で住民の『リスク認知』を高めようとしても、避難を促せない可能性がある」

 元吉教授によると、人類は目の前にある危険を経験しながら進化してきたため、直接的な危険には感情的に反応できる。「だが災害では、直接的な危険を目の当たりにした段階で避難を始めては遅い。避難にも危険が伴う」

 そこで元吉教授が呼びかけるのが「計画避難」だ。安全で快適な避難場所を事前に決めておき、危なくなる前にそこへ行くことを、ルール化しておくというわけだ。

 行きたくなる場所に避難するなら、ハードルは下がる。ホテルや旅館に泊まる、子どもが住むマンションへ行き孫と遊ぶ――。元吉教授はそんな「避難所」を提案する。

 従来の避難所の環境改善にも力を入れるべきだと訴える。「人は現状より劣悪な環境にわざわざ行くことはしない」

 では、避難を促す「情報」はどうあるべきか。

 5月20日から市町村の避難…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。