中国ワクチン外交の最前線 高い接種率セルビアを歩いた

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ベオグラード=疋田多揚
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 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、自国のワクチン確保に懸命だった欧米と対照的に、途上国などへワクチンを供給して存在感を増したのが中国だ。欧州連合(EU)未加盟の東欧のセルビアもその一つ。中国の「ワクチン外交」の最前線に記者が入った。

 ワクチンを打とう。生活を取り戻そう――。

 セルビアの首都ベオグラードにあるショッピングモールの4階に上がると、青い壁にこんな言葉が書かれていた。政府が買い物客を狙って設けた新型コロナワクチン接種センターだ。

 予約はいらず接種は無料。中国シノファーム製と米ファイザー製、ロシア製スプートニクVから選べる。行列はなく、すぐに打ってもらえるという。

 夏のギリシャ旅行のために妻と訪れたニコラ・アラドサブリェビチさん(31)が選んだのはシノファーム製。「抗体がたくさんできるってテレビで言っていたから」と笑顔を見せた。

 セルビアは一時、世界有数のスピードで接種が進んだ「ワクチン先進国」だった。少なくとも1回接種した国民は3割を超える。これに大きく貢献したのが中国だ。人口約700万人のセルビアで、5月上旬までに終えた約366万回の接種のうち、3分の2を中国製が占めた。ブチッチ大統領は「中国がとても助けてくれた」と感謝する。

 ブチッチ氏は中国の習近平(シーチンピン)国家主席に直談判。今年1月、中国製ワクチンが空輸されると空港で出迎えた。自らが接種を受けたのもシノファーム製だ。

 ワクチン効果もあり、セルビアの1日あたりの新規感染者数は3月下旬から10分の1以下の300人ほどに減少。街中でマスク姿の人はほぼいない。レストランの店内営業も認められ、日常生活が戻りつつある。

 ただ、代わりに接種への関心が低下して接種スピードが鈍化。いまは「ワクチン余り」とさえ言える。

 そのため政府5月、接種した市民に3千ディナール(約3400円)の商品券を配ることを決めた。外国人観光客も無料で好きなワクチンを接種できるほか、近隣国にも供給している。

 セルビアはEU加盟を協議中だが、EUは昨年3月、医療用品の域外輸出を禁止した。同じころ、中国はマスクなど医療物資を提供。ブチッチ氏は輸送の特別機を空港で出迎え、中国国旗にキスをした。

記事の後段では、中国との関係について語るセルビア大統領の単独インタビューをお伝えします。

投資や融資1兆円 依存するインフラ整備

 セルビアがあるバルカン半島は、かつて大国が覇権を争い「欧州の火薬庫」と呼ばれた。中国の進出が目立ち始めたのは、2010年前後のユーロ危機後、EUが投資を手控えて「空白地帯」が生まれたころだ。

 ベオグラードを流れるドナウ川に巨大な橋が架かっていた。全長1・5キロ、片側3車線の道路を、大型トラックが行き交う。

 橋のたもとには、中国語とセルビア語で「中国とセルビアの友好を記念する」と書かれた看板。14年の完成式典には李克強(リーコーチアン)首相も出席した。

 これを皮切りに、中国企業に…

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