脱「中学受験」 地方へ教育移住 イエナにハロウも

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編集委員・宮坂麻子
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 多様な学びを求めて地方へ――。受験といえば私立・国立の名門校や進学校を思い浮かべるが、従来とは異なる学びを求め、首都圏から地方へ「教育移住」し、子どもを小中学校に通わせる家庭が出てきている。海外の教育を採り入れたり個性の尊重を重視したりと、独自色を打ち出す学校が相次いで開校している。(編集委員・宮坂麻子

 長野県佐久穂町に2019年春に開校した、茂来(もらい)学園しなのイエナプランスクール「大日向小学校」。日本初のイエナプラン教育を行う認定の私立小学校だ。

 オルタナティブ教育の一つとして知られる「イエナプラン」は、ドイツのイエナ大学の教授が始めた教育で、1960年代ごろからオランダで広がった。独自の「20の原則」に基づいた教育がなされており、大きな特徴は異年齢の集団で学ぶことだ。時間割は「サークル(対話)・遊び・仕事(学習)・催し」の四つを循環して組み立てる。個性を生かし、協働して学ぶ。

 現在は小1~小6の約130人と、卒業した中学生約10人が、閉校した学校をリノベーションした校舎で、3学年一緒のグループ(学級)になり、学んでいる。授業料は年間約40万円。半数以上が、首都圏から保護者と移住してきた子たちだ。北海道から九州まで全国から集まる。

 5月の連休明け、小1~小3の「たいよう組」の教室を訪ねた。

 1年生2人がひらがなをなぞり書きしている隣で2年生1人が筆算を解き、その向かい側では3年生1人が漢字の練習をしていた。3年生は笑顔で「1年生にも時々教えるよ」。教室の中央では、学級担任にあたる教師「グループリーダー」が、別の3年生3人に漢字を教えていた。窓際や廊下の畳敷きのスペースで勉強する子たちもいる。

 学習指導要領に沿い、教科書も使っているが、教室には黒板もなく、一斉授業はほぼない。いつまでにどこまで習得するという目安に沿って子どもが学習計画を立て、わからないところを尋ねたり教え合ったりする。

 隣の「そら組」では、小1~小3の児童が長いすを丸く並べ、輪になって話しあっていた。イエナプランの特徴の一つ「サークル」だ。同校では、1日の始めと終わりにこうして自分を振り返り、周囲との対話を学ぶ。

異年齢の学び 中学も開校 公立「思う教育と違う」

 来春には中学校も開校し、小中一貫校になる予定だ。開校を待つ中1と中2生が、地元中学に籍を置きながら、中等部(フリースクール)の「鯨組」として学ぶ。この日は、学校全体で議論する会の議題決めをしていた。ある子が「毎日の振り返りのやり方も、自分たちで決めさせて欲しい」と言えば、司会の子は「自分でまとめられる子はいいけど、できない子もいるし……」と返す。どこまで子どもに任せてもらうかを話していたのだ。

 昨春、東京都世田谷区から息子2人と移住し、長男を小1から入学させた母親(39)は「都心の私立小は遠方への通学になるし、公立小に行けば親子で中学受験に必死になるかもしれない。自分の思う教育と違うと思っていた時、この学校に出会い、決めました」。夫は、単身赴任先の東北から週末だけやってくる。

 宅明健太教頭は「世に新たな学びの選択肢を示せればうれしい」と語る。長く公立小で教えてきた桑原昌之校長は「公立小をもっとよくしたいという思いから、この学校へ来た。『自立する、共に生きる、世界に目を向ける』ことを大切にする本校の実践は特別ではない。多種多様な人がいて、それぞれの個性を生かして力を合わせる。教えすぎの公立学校に影響を与えたい」と話す。

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 ほかにも、各地で多様な学校が誕生しつつある。

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