聖火 79人がつなぐ 石川県内の日程終える

平川仁 川辺真改
[PR]

 【石川】東京五輪聖火リレーランナーによる「トーチキス」のセレモニーが1日、七尾市の「和倉温泉湯っ足りパーク」であった。

 能登地区の4市5町を走る予定だった79人が登壇し、それぞれポーズを決めながら聖火をつないでいった。最終ランナーの俳優の若村麻由美さんが、聖火皿に火を移すと会場は拍手で包まれた。

 県内での2日間の日程はこれで終わり、聖火は富山県に移る。富山でも2、3日にトーチキスのセレモニーが開催される。

     ◇

 金沢市の笠谷亜紀さん(49)は葛藤を抱えたまま火を移した。

 石川県済生会金沢病院で看護師長を務める。マラソン大会にも出るほどのスポーツ好きで、地域の高齢者にラジオ体操の講座を開き、日々運動することの大切さを訴えてきた。五輪は毎回見逃さず、東京開催と聞き、「なんとかして関わりたい」と聖火ランナーに応募した。

 しかし、コロナ禍で生活は一変。看護師長として、病床数の管理に加え、PCR検査のためのスタッフ配置や、保健所との調整に追われている。感染が拡大した時は、1日60件以上の検査を手配することもあった。

 再延期論や中止論が持ち上がり、五輪への看護師派遣に対して医療界からも批判が起きた。笠谷さんも理解できるという。「医療従事者の自分が出て良かったのか」。火を移し終わった後も葛藤は消えなかった。

 ただ、聖火は「平和や、より良い世界を求める象徴」とも思う。「今、コロナの先は見えていないけれど、必ず先はある。多くの人がつないできた火を持って、その希望を感じた」(平川仁)

     ◇

 穴水町の嶋谷長治さん(72)は走者に選ばれていたが、参加をあきらめた。入所する障害者施設で感染者が確認されたからだ。

 中学卒業後に大工見習いになり、その道一筋。仕事も私生活も充実していた。だが、57歳の時、民家の屋根で作業中に気を失い、転落。頸椎(けいつい)を骨折し、7時間の大手術の末、一命は取り留めたものの、腰から下が動かなくなり、車いす生活となった。

 ふさぎ込んでいた嶋谷さんを救ったのはパラリンピック種目でもあるボッチャだった。障害者施設で出会い、練習を重ねた。全国大会で優勝するまでになり、一時は東京パラリンピック出場も目指したという。「選手として出られなくてもランナーとして出たい」とリレーに応募し、当選した。

 心待ちにしていたリレーはコロナ禍で1年延期に。さらに、開催まで2週間を切った5月下旬、施設で感染者が確認された。自身は3度PCR検査を受け、いずれも陰性だったが、万が一を考えて参加を断念した。「残念です。でも感染した人は責められない」(川辺真改)