文科省が抵抗、動いた「懐刀」 ケア児支援法案の舞台裏

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山下剛
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 たんの吸引や人工呼吸器など、医療的ケアが必要な子どもが保育園に通ったり、教育を受けたりできるようにする「医療的ケア児支援法案」が議員立法として提出され、今国会で成立する見通しだ。

 法案をまとめたのは、超党派の国会議員でつくる「永田町子ども未来会議」。中心メンバーのひとり、自民党野田聖子幹事長代行(60)は医療的ケア児を育てる母親でもある。5年間、議論を積み重ねてここまでこぎ着けた法案の条文には、当事者の思いもこめられている。

努力義務だけでは限界」

 会議は、立憲民主党荒井聰・元国家戦略相が立ち上げた。きっかけは2015年、東京都杉並区にできた障害児保育園を視察した際に、野田氏の長男が通っていると知ったことだった。

 野田氏に声をかけて会議を立ち上げ、以来医療的ケア児の支援に取り組んできた。16年に成立した改正児童福祉法には、地方自治体医療的ケア児に適切な支援を講じる努力義務を課す規定も盛り込んだ。

 今回、新たに法案づくりに取り組むことになったのは、地方自治体ごとの取り組みの温度差が解消しなかったからだ。「努力義務だけでは限界があった。地方自治体を動かすには根拠となる法律が必要だった」と荒井氏は話す。

 農水官僚出身の荒井氏にとって「政策は予算がついて省庁が動いてこそ実現できる」との思いがある。ただ、内閣提出の法案と違って、議員が提出する議員立法の法案は、省庁に前向きに取り組んでもらえない懸念もあった。

 そこで荒井、野田両氏が中心になって原案をつくり、昨年7月から厚生労働省文部科学省内閣府など関係府省の担当者を交えて法案づくりにむけた調整が始まった。医療的ケア児が通う保育園や放課後等デイサービスなどを運営するNPOの代表にも出席してもらい、意見を求めた。

文科省が激しく抵抗した文言

 そのなかで、法案の「基本理念」に掲げられたある文言に、文部科学省の担当者が激しく抵抗した。

 原案では基本理念に「希望する教育を受ける機会が妨げられる等の不当な扱いを受けることのないようにする」と記されていた。文部科学省の担当者は「当事者の意向に沿わないと『不当な扱い』にされるとなると、現場は動かない」などと強く反発したという。

 一方、保護者が付き添いを求められたり、看護師が確保できなかったりして満足な教育を受けられない医療的ケア児がいることを知る野田氏らにとっては、ゆずれない部分でもあった。

 動いたのは、荒井氏の懐刀と…

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