「子より仕事?」母親の葛藤  呼吸器の娘、通学できず

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山下剛
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 超党派の国会議員らがまとめた「医療的ケア児支援法案」が4日に提出され、今国会での成立を目指している。たんの吸引や人工呼吸器などの医療的なケアが日常的に必要な子どもが、保育園に通ったり必要な教育を受けたりできるように、園や学校に看護師の配置などを求める内容。保護者が学校で付き添わなければならない状況を解消することも狙いの一つだ。

 できることなら、娘を学校に通わせて、友だちと一緒に勉強させたい。

 東京都内の会社員、一絵(かずえ)さん(46)はそう願ってきた。でも、学校に通うまでの道は険しい。娘は人工呼吸器が手放せない「医療的ケア児」だからだ。

 長女で小学2年の絵瑠(える)さん(7)は、運動や認知の機能が落ちる「テイ・サックス病」という遺伝性の難病だ。人工呼吸器を使っているほか、口から食事をとることができず、現在はおなかの胃ろうから水分や栄養を入れている。

付き添い「1年以上」

 1歳のとき、鼻から通したチューブで栄養を入れる医療的ケアが必要になった。当時通っていた保育園に預かってもらえなくなり、建築関係の仕事をしていた一絵さんも、いったん仕事を辞めた。

 しかしその後、NPOが運営する障害児保育園などに通えることになり、仕事にも復帰できた。

 それでも、小学校に入る段階で再び壁にぶつかった。医療的ケア児の「小1の壁」と呼ばれる問題だ。

 医療的ケアを必要とする子どもは、学校看護師がその子どもに合わせたマニュアルを整備するなどしてケアができるようになるまでの間、保護者が学校で付き添うことを求められる。

 付き添いの期間はケアの種類によって異なるが、東京都教育委員会のガイドラインによると、人工呼吸器を使っている場合は「安定して登校できるか見極める」ことが前提となり、付き添いの必要がなくなるまでには入学してから1年以上かかる。

 一絵さん夫婦は共働きで、仕事と付き添いとの両立は難しい。さらに、学校への送迎や放課後の預かり場所をどうするかという問題もある。

 一絵さんは「共働きで子どもがいる家庭はたくさんあるのに、医療的ケアがあるとこんなに通学のハードルが高いのか」とがくぜんとした。

 悩んだ末に通学をあきらめ、特別支援学校の教師が自宅で授業をする「訪問教育」を選んだ。一絵さんが在宅勤務をしている傍ら、毎週3回、先生が自宅を訪れて、2時間の授業がある。絵瑠さんは音楽の授業で歌を歌ったり、図画工作で折り紙を折ったり、楽しそうに過ごしている。

通学2回だけ

 でも――。

 特別支援学校の小学部に入学した昨年度はコロナ禍もあって、スクーリングなどで学校に通ったのは2回だけ。オンラインで授業に参加したこともあるが、実際に教室で友達と触れ合うことも経験してほしい。

 子どもの教育より両親の仕事を優先してしまっているのではないか。そんな葛藤も抱えている。夫は建築関係の仕事で現場などに出ているため、付き添いをすることは難しい。「せめて私が働かなくても暮らしていける経済環境だったら」とも思う。

 一絵さんは「親が働いていても働いていなくても、学校に通える環境を作ってほしい」と訴える。

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