浪人笠で奏でる独学のサックス 聞き手の心に響くわけ
頭をすっぽりと網笠で覆ったまま、サックスを奏でる。腕には、伴奏を流すために巻き付けたスマートフォン。謎めいたいでたちのストリートミュージシャンは、「サックス侍」を名乗る。
名古屋のまちで路上ライブを始めたのは5年ほど前のことだ。当初は帽子を目深にかぶって「サックスパパ」と名乗っていた。
新型コロナウイルスの感染が広がったことで、口元を露出して演奏していては誰かに注意されかねない。フェースシールドも考えたが、思いついたのが「浪人笠」だったという。幕末のドラマが好きで侍に憧れがあった。
「音楽の中身ではなく、見た目で人をつるようで、迷いがありました」
しかし、コロナ禍でテーマパークなど「非日常」を味わえる機会が減っている。「日常にエンターテインメントがあれば、楽しんでもらえるのでは」と考えた。
もちろん、格好だけで注目されるつもりはない。
「『面白い格好をしている人がいる』で終わったら、僕の負けです」
めざすゴールは、「誰かに感動してもらうこと」という。「譜面どおり、音程ぴったりに吹くよりも、感情重視の方が響くと思う」。そもそも、楽譜を読むことはしない。いや、できない。
「サックス侍」には、路上ライブで忘れられないできごとがあるといいます。浪人笠の下から、コロナ禍のまちはどうみえているのでしょうか。記事後半で紹介します。
「サックス侍」の正体は、名…