第1回台湾を包囲した空軍機 「二正面」訓練で圧力高める中国

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編集委員=佐藤武嗣、土居貴輝、台北=石田耕一郎 北京=冨名腰隆、ワシントン=園田耕司
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デザイン・米澤章憲
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 3月29日午前。沖縄県航空自衛隊宮古島分屯基地の対空レーダーが、中国・上海方面から南東に飛行し、日本の防空識別圏(ADIZ)に進入する「機影」を捉えた。

 「スクランブル緊急発進)!」。空自那覇基地の格納庫に警告音が鳴り響くと、F15戦闘機が2機編隊で次々離陸した。

 「機影」は、中国のY9情報収集機とY9哨戒機の2機だった。沖縄本島宮古島間を飛行。さらに情報収集機は太平洋に出た後、台湾の東側に回り込んだ。中国機2機を追尾するのに計10機以上の空自F15が対応したという。統合幕僚監部はこの日、日本ADIZに進入した中国機の航跡を記した地図を公表した。

防空識別圏〉国際法で定められた領空(沿岸から約22キロの領海上空)とは別に、各国が防空目的で設定する空域。領空よりも外側に張り出して設定されることが多い。日本の場合、事前申告がなく、領空に接近しそうな航空機が防空識別圏に入ると、航空自衛隊緊急発進スクランブル)の対象となる。

 だが、その地図は、この日の中国機の動きの一側面しか描いていなかった。

連載「台湾海峡『危機』のシナリオ」(全7回)

米国と中国の対立が先鋭化する中、台湾をめぐる動きが活発化しています。ひとたび台湾で何か起きれば対岸の火事というわけにはいかないのが日本です。日米と台湾は増大する中国の軍事力にどのように対処しようとしているのか。台湾で危機が起きるのか。現場への取材などから今後の動向をさぐる連載です。全7回の初回は中国機の度重なる防空識別圏への進入から見えてくる中国の戦略に迫ります。

 日本側への進入と前後して、台湾の西方でも中国人民解放軍の空軍機が続々と台湾のADIZに進入。周辺空域の監視と友軍機の指揮・統制をする早期警戒機のほか、哨戒機や8機の戦闘機など、その数は計10機にのぼり、Y8哨戒機はADIZを何度もまたぎながら台湾南東まで往復した。

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中国のY8哨戒機=台湾国防部提供

 統合幕僚監部と台湾空軍が発表した地図を重ねると、この日の中国機が台湾を「3方向」から囲い込む航跡が浮かび上がる。

 「訓練は、中国軍が通常演習をより複雑で現実的にすることで戦闘準備の能力を高めるもので、米国や日本の介入の可能性を考慮に入れている」。中国軍の意図について、中国共産党の機関紙・人民日報系の環球時報(英語版)は、翌日の記事で、台湾への牽制(けんせい)と、日米の介入阻止を狙った「二正面」の訓練だったとの軍事専門家の解説を掲載した。

 中国軍の訓練は米台の接近を牽制する狙いがあるとの見方が強い。米台は3月25日に海上警備や情報共有を強化する覚書に調印。同28日には台湾が外交関係を維持するパラオの大統領訪台の際、駐パラオ米大使も台湾を1979年の米台断交後初訪問した。また、日米も同16日の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で「台湾海峡の平和と安定」で連携することを確認していた。

 一方、中国軍の圧倒的な勢いに台湾側は対応が困難になってきている。

記事後半では、強まる中国からの圧力に苦慮する台湾の立場が見えてきます。台湾有事は起きるのか。起きた場合どうなるのか。専門家らの間で指摘されている3つのシナリオについて解説しています。

 「兵力の運用に影響が出てき…

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