第2回法廷に響いた、万葉学者のツルの鳴きまね 驚いた裁判長

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――若(わか)の浦に潮満ち来れば潟(かた)を無み 葦辺(あしべ)をさして鶴(たづ)鳴き渡る

(和歌の浦に潮が満ち、干潟が姿を消した。アシが群生する陸の方へ、鶴が鳴きながら飛んでいく)

「クローク、クローク、クックローク」

 山部赤人(やまべのあかひと)の歌の朗唱に続き、かん高いツルの鳴きまねが、和歌山地裁の法廷に響き渡った。1991年6月5日、和歌山県が計画する橋の建設差し止めを求めた「和歌の浦景観保全訴訟」の証人として立った万葉学者・犬養孝(いぬかいたかし)の声だ。幼少時を東京・上野動物園の近くで過ごした犬養は、ツルの鳴きまねが得意だったという。「潮が満ち引きする景観がそのままで、昔の景色を想像できるのに、こんな橋を架けたらぶっ壊しです」

 聖武天皇が行幸に訪れ、山からの眺めの良さを「遠行を労せずして以(もっ)て遊覧するに足る」と述べた和歌の浦(和歌山市)は、中世は和歌の聖地、江戸時代には紀州徳川家が整備した景勝地として親しまれてきた。バブル期の88年、県は干潟の一部を埋めて橋の建設を計画。反対する市民や研究者らが「歴史的景観権」を押し立てて提訴した。

「万葉でメシは食えない」に言い返した

  「ツルの声には裁判長もび…

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