鏡で「金髪」見るとスイッチ どん底味わい、振り切った

井上翔太
[PR]

Go For It!ベイスターズ

 今季2年ぶりに横浜DeNAベイスターズの担当に戻った身として、その変貌(へんぼう)ぶりに驚いた。「俊足巧打のイメージだったのに……」と。

 山下幸輝の大きな転機となったのは、2019年のシーズン。国学院大から14年秋のドラフト5位で入団後、初めて1軍の試合に出場できなかった。戦力外も頭をよぎる中、契約が更新されたことで「短所を克服するより、長所を磨いてアピールしよう」と考えを変えた。

 17年の公式戦で悪送球し、守備には苦手意識を持つようになった。ならばと、打撃に特化して練習を重ねた。今は代打出場が多く、一打席にかける日々を送る。「この打席が野球人生の最後かもしれない。悔いのないように」。一振りごとに叫ぶのも、四球を選ぶと笑顔で一塁に駆けるのも、源流にはそんな思いがある。

 昨季は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期となり、6月に始まっても無観客となった状況が、山下の「振り切り」を加速させた。

 東京・関東第一高時代、ウェートトレーニングに目覚めた。「周りのでかい選手が、かっこいいなと思って。『俺なんて、高校で終わりだな』と思っていたので、『せっかくなら体を少し大きくして、地元に帰ろう』というノリだったんです」。だがトレーニングを積むと、結果が出始め、楽しくなった。

 下級生の頃は「打球が外野に飛ばない」ほどだったが、3年夏の甲子園で2試合連続本塁打を放つまでに、成長した。

 コロナ禍の中、トレーニング好きに拍車がかかった。「無観客でファンに自分を見てもらえないまま、プロ野球生活を終えたくなかった」。前年から、体重は10キロ以上増。首は太くなり、胸板も厚くなった。

 自身の性格は、「ネガティブ」。ミスを引きずりやすく、周囲からの視線も気になりやすい。

 そこで昨季のキャンプから、金髪にした。鏡で自分の姿を見るたびに「人目を気にしないと決心して、金髪にしたんだから。俺はもう、吹っ切っている」とスイッチが入る。

 「野球をやめたいと思ってしまう性格でも、一つのきっかけで人間は大きく変われるということを、僕を通じて知ってほしいです」

 一度はどん底を味わったからこそ、まばゆく光る個性がある。井上翔太