凍った原発計画、回り出した風力発電 町の貴重な収入に

川本裕司
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 中国電力の原発建設計画がある山口県上関町で、2年前に稼働を始めた町営の風力発電所が町の貴重な収入源となっている。原発は、建設に伴う埋め立て準備工事が2011年の東京電力福島第一原発事故後は止まったまま。新たな収入の柱として計画された風力発電事業は原発の賛否を乗り越え、町は観光名所にしたいと期待をかけている。

 上関町風力発電所は、直径86メートルの風車2基が同町長島の上盛山(かみさかりやま)(315メートル)に立つ。出力は1基2千キロワット。20億円をかけて建設し、19年4月から運転を始めた。昨年7月の大雨による土砂崩れで、数キロ離れた高圧線の電柱が倒れて1週間送電できなかったが、発電はほぼ計画通り。2年間で計4億円を中国電力に売電した。

 今後の修繕費のための基金積み立てなどを除き、19年度と20年度に町の一般会計予算へそれぞれ5千万円が繰り入れられた。建設費の多額の借入金返済が22年度から始まるが、返済が終わった34年度からは町への繰入額はさらに増える見込みだ。周辺に住宅はなく、騒音問題もなかった。

 県環境政策課によると、風力発電所は県内には現在、下関、長門市と平生町など10カ所にある。うち、自治体が運営するのは上関町だけ。日本風力発電協会(東京)によると、全国で約450ある風力発電所の8割以上を民間企業が占める。

 町によると、原発の立地可能性調査が始まった1984年度から国の交付金が入り始めた。95~04年度の交付金の年平均額は約3億5千万円あったが、05年度からは約7千万円に。原発の建設計画が事実上凍結され、その後の交付金も増額が見込めない状況だ。柏原重海町長は「原発建設を推進していたが、東日本大震災後の情勢を見極めるため、中国電力に中断を申し入れた経緯がある。自治体が収益を求める事業をするのはリスクがあり好ましくないが、町税の収入が落ち込むなか、背に腹は代えられず、日々の町民の暮らしを守らないといけない」と話す。

 風力発電所の建設に合わせ、町は長島で最も高い場所にあり、九州や四国も見渡せる上盛山展望台への道路を整備。観光の目玉にともくろむ。柏原町長は「風力発電は売電による財源確保と展望台への道路拡幅、観光開発の一石三鳥になる」と話している。(川本裕司)