「雄が来た!」絶滅ライチョウ復活作戦 つがいを確認

近藤幸夫
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 国の特別天然記念物・ライチョウが半世紀前に絶滅した長野県中央アルプスで、「復活作戦成功」の期待が高まってきた。環境省信越自然環境事務所が2日、生息地の乗鞍岳から移して昨年放鳥したライチョウが越冬し、つがいも確認できたことを発表した。生息調査に同行した記者も、標高約2850メートル付近でペアの雌雄の様子を見ることができた。

 「雄が来た!」。5月28日午後2時50分ごろ、木曽駒ケ岳近くの稜線(りょうせん)で調査中、突然、雄のライチョウが飛んできて近くの岩場に止まった。1分ほど周囲を警戒し、再び険しい地形のハイマツ帯に戻った。

 調査を指揮した中村浩志・信州大名誉教授のアイデアが実った。繁殖期の雄は、自分のなわばりに侵入してきた別の雄を追い払う。この習性に着目した中村さんは、カセットテープに録音した雄の鳴き声を流しておびき寄せていた。目の上の赤い肉冠が発達し、黒羽と白羽の雄の近くには、羽が茶褐色の雌がいた。個体識別のために着けていた足輪の色から、このつがいは昨年放鳥したライチョウのうち、違う家族の若鳥同士だと分かった。

 この日を含む5月27~29日の調査では、全部で3つがいが確認された。驚いたのは、絶滅したと思われていた中央アルプスで2018年に見つかり、「復活作戦」が動き出すきっかけとなった雌が、昨年孵化(ふか)した若い雄とペアになっていたことだ。この雌は一昨年、昨年と乗鞍岳や動物園から運んだ有精卵を抱卵して孵化させたが、雛(ひな)は10日以内に全滅していた。中村さんは「やっとつがいとなる雄にめぐりあえて、自分の子どもを残すことができる」と感慨深げに語った。

 記者は4月下旬の調査(3日間)にも同行取材したが、見つかったのは糞(ふん)や鳴き声などの痕跡のみでライチョウの姿を見つけることはできなかった。環境省による4~5月の計5回の調査で、つがいが確認されたのは今回が初めてだ。また、登山者の目撃情報なども含めて少なくとも13羽が生存しているとみられる。

 昨夏、乗鞍岳から環境省が移送して放鳥したライチョウは3家族計19羽だった。高山帯に生息するライチョウは、雪で覆われて高山植物などの餌がとれなくなる冬場は、木がまだらに生える森林限界まで下りて越冬する。高山帯の雪解けで本来の繁殖地に戻る。

 6月は繁殖期で、雌が産卵、抱卵して雛が誕生する。順調に育てば、孵化した翌年の春から繁殖が可能だ。子育ては母鳥だけで、雄は参加しない。

 環境省の「復活作戦」では、今年、雛を含む5家族をケージで保護する予定。このうち3家族を現地で放鳥するほか、茶臼山動物園長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)の2施設に1家族ずつ移送する。そして、来年以降に繁殖させて野生復帰させる計画だ。(近藤幸夫)