私の故郷にも戦争があった 38歳双子が撮った映画完成

西晃奈
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 岩手県北上市に眠る戦争の記憶をたどるドキュメンタリー映画を、同市在住の双子の兄弟が制作し、8月に公開する。太平洋戦争の開戦から12月で80年になるのを前に、足元にあった戦争を見つめ直し、同じ道を進まないよう訴える。

 制作したのは、38歳の映画プロデューサー、都鳥(とどり)拓也さんと伸也さん。2人が小学生のころ、祖父の源司さん(93)から戦争体験を聞き、戦争を身近に感じたことが原点にある。

 現在の北上市には、軍用機の製造に必要なアルミニウムの原料を生産していた国産軽銀工業岩手工場があった。敗戦間際に特攻機が出撃した岩手陸軍飛行場もあり、米軍の空襲に幾度となくさらされていた。

 「国見山の方からグラマン(戦闘機)の編隊が飛んできたのが見えた」

 軽銀の工場で働いていた祖父の話は、広島と長崎の原爆や沖縄戦東京大空襲など、遠くの出来事と考えていた戦争のイメージを覆した。「自分の町にも戦争はあったんだ」

 2人は高校を出たあと、川崎市にある日本映画学校(現・日本映画大学)に進学。特撮の舞台裏を知り、映画づくりに憧れたからだ。卒業後は故郷に戻り、東日本大震災や自殺をテーマに映画の撮影を続けてきた。

 そして3年前、辺野古への基地の移設をめぐり、揺れる沖縄を取材していたときのこと。高校生の一言に、胸を突かれた。「足元にある戦争について考えるのって大事なんだね」

 戦争は自分たちの遠くだけで起きるわけではない――。小学生のころに感じたことを思い出した。「故郷に眠る戦争の記憶を、語れる当事者がいるうちに記録しなければ」

 2019年4月、映画の撮影を始めた。

 北上平和記念展示館で、恩師にあて教え子たちが戦地から送った7千通を超す軍事郵便にまつわる物語を取材。特攻隊の生き残りに会い、祖父にも改めて話を聞いた。

 8カ月間の撮影を通して、社会が戦争一色に染まるなか、戦地にいる家族を思い、悪化する戦局に不安を抱きながら過ごした人びとの足跡をたどった。

 編集作業の時期はコロナ禍と重なった。拓也さんは「国に先導され、正しい判断ができなくなっている今は、戦時中と重なる。自分自身で考えて行動することが必要だ」と話す。

 1時間46分に及ぶ映画をこう締めくくっている。

 「戦争が人為的に引き起こされる以上、私たちはそれを防ぐことも出来るはず。北上に眠る戦争の記憶は、私たちにそう語りかけてくれている」

     ◇

 映画「戦争の足跡を追って」は8月21日、市文化交流センターさくらホールで3回上映される。問い合わせはロングラン(0197・67・0714)へ。(西晃奈)