「性善説」で大丈夫か 五輪のプレーブックを読み込むと

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前田大輔、斉藤佑介、荻原千明、塩谷耕吾
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 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに参加する選手や関係者の行動ルールをまとめた「プレーブック」について、大会組織委員会が今月中の最終版発行に向けて詰めの作業を進めている。4月末に公表された第2版を元に、課題を読み解いた。

 2日午後4時、群馬県太田市のホテル3階ホールに、五輪に向け合宿中のソフトボール女子豪州選手団約30人が集まってきた。現地入りしてから初の、新型コロナウイルスの検査のためだ。民間検査会社の職員からキットの使い方などの説明を受けた後、10人ずつに分かれて唾液(だえき)を採取し、職員に手渡していった。

 プレーブックなどによると、五輪・パラ期間中は計1万5千人の選手に毎日、抗原定量検査を実施する。選手村などの専用エリアで担当者の監督下で唾液を採取する。大会中の検査件数は数十万件にのぼる見通しだ。国際競技団体や海外メディアなど、計約7万8千人の大会関係者にも検査を実施する。入国後3日間は毎日、4日目以降は選手との接触頻度に応じ、毎日~7日に1回。民間の委託業者が競技会場など約60カ所で回収し、24時間以内に結果を知らせる。こちらは期間中、計130万回を想定している。両者合わせて最大で1日5万~6万件と見込む検査は、大会組織委員会の橋本聖子会長が「既存の公的な検査態勢には影響を与えないように」との狙いから、すべて民間の検査機関への委託を進めている。

 当初は鼻の奥をぬぐって検体を採取するPCR検査の導入が検討されたが、採取には医療従事者が必要になるため見送りに。唾液を用いた抗原検査とPCR検査でいずれも陽性が疑われる時に限ることにした。

 バイデン米大統領の新型コロナ対策のアドバイザーを務めた教授らは、PCR検査を最低1日1回は実施すべきだとの論文を発表した。一方、北海道大大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授は、抗原検査の方が結果が早くわかり、陽性が疑われるケースでは同じ唾液でPCR検査をすることから、スクリーニングとして十分に機能するという。唾液を用いる点も「毎日多くの人を検査するにはスピード感が必要。医療従事者の負担が大きく、時間がかかる鼻咽頭(いんとう)ぬぐい液による検査は現実的でない」と述べ、現状の対応を「合理的な手法といえる」と話す。

 ただ、関係者の間には、検査の実効性に疑問の声がある。

 厚生労働省は、唾液採取の直前に歯磨きやうがい、飲食をすると検査の精度が落ちるとして、「歯磨きや飲食後、最低10分以上、できれば30分ほどあけることが望ましい」との指針を公表している。

 この点について、東京五輪に関わる予定の医師は、「試合を前にして、陽性反応を恐れて(検査前の飲食や歯磨きなどの)行為に及ぶ選手が出てきてもおかしくない」と警告する。別のスポーツ関係者も「ドーピング検査と同等の厳正な態勢が必要ではないか」と言う。

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