取り戻したい住民自治 合併した「星のふるさと」の挑戦

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野上隆生
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 美しい棚田が広がる福岡県八女市星野村。「星のふるさと」としてPRしていた旧星野村は2010年の合併で消えたものの、いまも村には多くの人々が集い、地域づくりのための熱い議論が交わされている。

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旧星野村地域に広がる棚田=2008年10月、朝日新聞社ヘリから

 山里が闇に包まれた午後7時半。八女市役所星野支所に人が集まった。かつての星野村役場だ。

 住民たちが町づくりを実践する「星野未来塾」の会議。いつもなら20~30人集まるが、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下のこの日は塾頭の山口聖一さん(71)ら7人の執行部会に切り替えた。席を離し、民間の公園管理をどう支援するかなどについて熱心に議論を交わした。

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緊急事態宣言を受け、急きょ執行部会に変更された「星野未来塾」の会議=2021年5月18日午後9時5分、福岡県八女市星野村の八女市役所星野支所、野上隆生撮影

 未来塾では環境、社会、経済の三つの部に分かれ、プロジェクトが動き出すと分科会を作って、実践に移す。この日は環境部が「日本の棚田百選」に選ばれた「広内・上原地区の棚田」の田植え準備状況を説明し、社会部は空き家バンクの情報集めの課題を報告。経済部は準備してきた伝統本玉露の茶摘みサポーター制度が緊急事態宣言で中止となったことを報告した。

 星野村は2010年、すでに上陽町と合併していた八女市黒木町、立花町、矢部村と合併。「平成の大合併」を経て、旧町村部の多くが住民サービスの低下や人口減少に悩まされたのと同じような道を、星野村もたどった。

 さらに12年7月に九州北部を襲った豪雨で道路が寸断されるなどの甚大な被害を受けた。人口減少は加速し、今年4月1日現在の旧星野村地域の人口は2267人。合併直前の約3300人から、10年ほどで3分の2に減った。村役場職員は現業職を除いて57人いたが、現在の星野支所の正規職員は20人。村議は10人いたが、現在の八女市議で村内に住むのは1人だけだ。

「このままでは住民自治が壊れる」

 塾頭の山口さんは定年後のUターン準備のため、横浜市から一時帰省中に豪雨災害にあった。被災後のボランティア活動に取り組むなか、以前は村役場が音頭をとってできていたことが、支所では難しくなったと痛感。「このままでは住民自治が壊れる。住民自治の経営組織をつくろう」と決意し、18年11月に未来塾設立にこぎ着けた。

 「行政に頼るのではなく、住民自らが地域づくりの意見を出し合う場に」と、農家やNPO関係者、商店主、学生、女性グループ、村外からの支援者も多数参加。「来た人が塾生」といい、年齢層も中学生から70代までと幅広い。月1回の定例会を開いている。

 未来塾は「2030年に人口2500人」を目標に掲げる。それを実現するため「棚田物語」「ウエルカム移住プログラム」といった「21の未来像」を描き、さらに「棚田保全と茶園の観光地化の促進」「雇用・住環境整備を中心とした移住・定住促進」など52項目の具体策を決定。住民による「星野村総合計画」だ。

 副塾頭で地元の電気工事店長の山口篤志(とくし)さん(41)は「外部の人の力も借りて、移住してもらえる魅力ある星野づくりを目指す。私自身は実行部隊として、熱い気持ちをもった塾生たちをサポートしたい」と未来塾にかける思いを話す。

 自由な議論がモットー。だが、毎回同じ課題ばかりが上がり、話が先に進まないことも多いという。それでも、塾頭の山口さんは気にしない。「自発的行動につながるまで、何度でも話すことが重要なんです」

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「星野未来塾」塾頭兼「がんばりよるよ星野村」理事長の山口聖一さんは毎週末、任された管理地で草刈りのボランティア活動に励む=2021年5月22日午後3時3分、福岡県八女市星野村、野上隆生撮影

「棚田物語」の幕が上がった

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 未来塾を支え、活動を後押し…

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