河南高校軟式野球部、強さのワケ 61年ぶり大阪の春V

安井健悟
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 大阪府富田林市の河南高校が、先月16日に決勝があった春季近畿地区高校軟式野球大会府予選を61年ぶりに制した。優勝の裏には、「選手の自主性にゆだねる」という監督の強い信念があった。地元からの期待も受けて、5日に開幕する近畿大会に臨む。

 河南は1906年創立の公立校で、軟式野球部は50年に設立された。夏の大阪大会を4度制し、2018年には全国大会で準優勝した。

 一方、春の大会は勝ちきることができなかった。田中誠二監督(63)は「大阪は激戦区。春の大会は新チームになってすぐに始まるため、仕上げきるのが難しかった」と話す。

 数学教師の田中監督が同校に赴任したのは08年。当初は土日も休まず練習を行い、試合でミスをした選手にはベンチで怒鳴ることもあった。「いま思えば、相当厳しい指導だったと思う」

 指導は選手たちになじまなかった。練習試合当日になって、10人以上の選手がボイコットしたこともあったという。田中監督は「当時は厳しく接するのが当たり前と考えていた。監督就任早々で結果を残したいという焦りもあった」と振り返る。

 選手らとの「衝突」を機に、自分が前に出ることはやめ、練習環境を良くすることに注力しようと決めた。グラウンド整備用のトンボを自作したり、軽トラックで大量の土を運んでブルペンをこしらえたり。そうした関係が定着してくると、選手らの中に「自分たちで練習内容やチームの運営を決めたい」という自主性が芽生えてきたという。

 こうした変化をみて、選手のペースで個性が伸ばせるよう、練習や生活態度についてあれこれ口出しすることをやめた。

 日常の練習だけではない。練習試合では監督がサインを出し、試合に出ない控え選手らが審判をする学校も多い。だが、田中監督は自ら球審を務める。「私がベンチに入らないことで生徒が試合運びを主体的に考えてくれるし、球審をしていると一人ひとりが何を考えてプレーしているかよくわかるんです」

 今回の府予選では、選手自身の判断で磨いてきた守備力が光った。不戦勝の試合を除く全3試合で完封勝ちを収め、1960年以来の優勝を果たした。田中監督は「生徒に委ねるやり方が間違っていなかったと実感できた。選手らの頑張りが報われて安心した」と目を細める。

 主将の甲斐(かい)叡人(えいと)君(3年)は「普段から一人ひとりがチームのために何をするべきかを考えて行動できている。夏の全国優勝という目標に向け、近畿大会で経験を積みたい」と意気込む。

 同校近くのスポーツ店「上野スポーツ」に勤務する麻野光哉(みつなり)さん(51)は、同校硬式野球部のOBだ。「地元出身の子どもたちが、近畿大会という大きな舞台で戦うことはうれしい」。学校での練習や試合をよく見に行くという近所の山口昌弘さん(82)は「コロナ禍で気分が暗くなりがちなときに、河南の頑張りで元気をもらっている。地域が明るくなってありがたい」と話した。

 近畿大会は5日から京都府綾部市のあやべ球場で開催される。河南は6日の初戦で、飾磨工(兵庫)と対戦する。(安井健悟)