「生き残ってくれてたんだね」豪雨被災の川にホタルの光

寿柳聡
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 大分県由布市湯布院町湯平の湯平温泉を流れる花合野(かごの)川に、ホタルが姿を見せた。毎年地域に風情をもたらしてきたホタルの名所だが、昨年7月の豪雨で川は温泉街に大きな被害をもたらし、崩れた護岸の修復工事は今も進む。地元の人たちはホタルの光を見て喜び、被災前のように川面を飛び交う風景が今年も見られるか気をもんでいる。

 2日夜、湯平を象徴する石畳通りの入り口そばの橋から花合野川に目をこらすと、茂みで点滅する淡い光が一つ見つかった。ゲンジボタル。カメラを据えピントを合わせようとしている間に飛び立ち、ふらふらと川下に消えていった。

 川沿いに立つ「清流とほたるの宿 高尾荘」の女将(おかみ)、山田美耶さん(39)は5月末に最初の1匹に気づいた。「見つけた瞬間泣きそうになった。生き残ってくれてたんだね」。例年なら6月中旬が見頃といい、「どこまで戻ってきてくれるだろうか」と気をもむ。

 湯平の豪雨被害ではオリジナルキャラクターの電脳女将・千鶴で知られた「旅館つるや隠宅」の一家4人が車ごと花合野川に流されて亡くなり、泥流は石畳の温泉街も襲った。川べりの共同浴場「砂湯」が全壊。巨大な石が川のあちこちに残され、崩れた護岸の修復工事が続いている。

 高尾荘も1階が床上浸水し壁の一部も崩れた。その晩、隣接する自宅で休んでいた山田さんは「地鳴りがして家が揺れだした」と振り返る。子どもを抱き、足元から30センチほどまで水につかりながら、川から少し離れた別の宿へ避難した。

 つるや隠宅は廃業したが、ほかの宿19軒は被災を機にリニューアルするなど復興を進めてきた。高尾荘も今年3月に営業再開。清流にホタルをあしらった宿のロゴマークも新たにつくった。山田さんは、「部屋からホタルが見られるのも宿の売り。先日は露天風呂でも1匹を見つけた。少しでも多く戻ってきてくれれば」と話している。(寿柳聡)