万引き、兄から性暴力 シングルマザーを支えた存在とは

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川村さくら
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女性は娘が書いた手紙をすべて引き出しに大切にしまっている=2021年5月23日、川村さくら撮影
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 「事件を知ったとき、自分もそうなっていたんじゃないかと思った」

 北日本に住む20代のシングルマザーの女性が「事件」というのは、札幌市で2019年6月5日に2歳だった池田詩梨(ことり)ちゃんが亡くなったことだ。母親と交際相手の男が、詩梨ちゃんに十分な食事を与えず、衰弱死させたとして逮捕された。自分とそれほど年齢が変わらない、その母親に自らを重ねた。

 「2人とも、自分を守ることに必死だったんじゃないかな」

 女性は、心から大事に思える小学生の娘と2人でアパートで暮らしている。娘は前の夫との子。いま、おなかには新しい命が宿る。信頼できる人と巡りあい、再婚する予定だ。

詩梨ちゃんと母親への札幌市の対応

専門家らによる札幌市の検証部会が2020年3月にまとめた報告書によると、詩梨ちゃんの母親は16年の妊娠判明時に18歳で、経済的に困窮していた。同市東区の保健師は積極的な支援が必要な妊婦と判断したが、組織内の連携が十分でなく、具体的な支援につながらなかった。詩梨ちゃんは4カ月健診、1歳6カ月健診で成長不良が見つかり、経過観察のため来所を指示されたが、母親は来なかった。

 小さな町で育った。母と3歳上の兄がいた。物心がつく前に父は家を出た。そのあと母と内縁関係になった男性も女性が小学生のころに出て行った。

 母は働こうとせず、生活保護を受給していた。満足な食事ができなかった女性は、塩をなめて空腹を紛らわせた。砂糖をなめていた兄は虫歯だらけになり、肥満になった。

 中学生になると、母に命じられて頻繁にスーパーで万引きをした。スポーツ用のエナメルかばんに、母が飲む酒や弁当や菓子を詰めた。「生きるために仕方がない」。そう割り切っていた。

 そんなころ、心に傷を負う体験をした。母が携帯サイトで出会った男性に会いに泊まりがけで出かけた日の夜だった。

 自室の布団に兄が潜り込んで…

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