日本人が返した韓国国宝 「歴史的事件」と息子は記した

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神谷毅
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 1985年、周囲の反対を押し切って泉千春さん(59)は韓国の地を踏んだ。1年間の留学のつもりが社会や美術を学びたくなり、学部から大学院へ。韓国人男性と結婚して長女と長男をもうけ、大学で日本語を教え始めた。気がつけば、韓国暮らしの方が長い。

 泉さんは昨秋、韓国の国立中央博物館で国宝「歳寒図」の特別展を見た。今にも消え入りそうな筆遣いで描かれたわらぶきの家と、荒い太い線の松とカシワの木。朝鮮時代の書芸家、金正喜(キムジョンヒ)(号は秋史(チュサ))が済州島に流されていたころの心情を細やかに表している。

 「あれ? どうしてここに日本人が出てくるのだろう」。何げなく足を運んだ泉さんだが、展示内容の説明に「藤塚鄰(ちかし)」という名を見つけ、釘付けになった。泉さんが調べ始めると、いろんなことが分かってきた。

 泉さんや中央博物館によると、秋史が亡くなって70年余り時が下った日本の植民地時代、当時の京城帝国大学の教授だった藤塚が歳寒図を手に入れた。いつも眺めるほど愛着があったようで、絵とともに帰国した。

 その藤塚を1944年、書家…

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