どこが対象? どうしたら罰則? 土地規制法に不安の声

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 重要施設や国境近くの離島などの土地建物の利用を規制する法案が参院で審議されている。どこが対象となり、何をしたら罰せられるのか。あいまいなまま進むことに、各地で不安の声があがっている。

 法案が成立すれば、大きな影響を受けそうなのは沖縄だ。沖縄弁護士会は5月、「県土そのものが国境離島であるばかりか多くの米軍基地を抱えている。県民誰もが調査規制の対象となってもおかしくない」と声明を出した。

 沖縄本島では、面積の14%を米軍基地が占める。

 重要施設の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定でき、土地や建物の持ち主や借り主について調査できる――というのが法案の柱のひとつだ。

 明記されている重要施設は、自衛隊や米軍の基地、海上保安庁の施設。他にどんな施設が含まれるのか、何を調査するのかは政令などに委ねられている。

 沖縄平和運動センターの試算では、嘉手納基地なら1キロの範囲内に約9万人、普天間飛行場なら約10万人が住んでいる。同センターは「基地被害を受ける県民が、救済を受けるどころか監視対象になる」と廃案を求めている。

 米軍横田基地東京都福生市など)をめぐる騒音訴訟の先頭に立ってきた福本道夫さん(71)も懸念がぬぐえない。訴訟原告団の事務所は基地フェンスから650メートル。「反対運動をしたり、訴訟を起こしたりすることを『個人情報を収集されるかも』とためらう人が出るかも。運動を牽制(けんせい)する意図を感じる」と言う。

 重要施設周辺や国境離島の土地建物の持ち主などが「機能を阻害する行為」をすると命令・勧告を受け、罰せられる――もうひとつの法案の柱だ。政府は国会審議で、電波妨害や構造物の設置などがあたると説明している。ただ具体的な中身は決まっておらず、実行には至っていない「明らかな恐れ」の段階でも勧告・命令の対象になる。

 横浜市の木元茂夫さん(66)は、神奈川県内の米軍・自衛隊基地の監視活動を約30年続けてきた。どこかに拠点を設け、艦船や航空機の出入りをチェックしてネットで配信したりすることは罰則の対象になるのか。あいまいなままだ。

 日本弁護士連合会は「思想・良心の自由や財産権などを侵害するおそれがきわめて大きい」と反対する会長声明を2日、出した。

 そもそも法案は、外国人や外国法人による土地買収に懸念が示されていたことに端を発する。

 北海道庁によると、2019年12月時点で外国企業などにより取得された道内の防衛施設等周辺の土地は35件、約218ヘクタールあるという。19年末までの7年弱で、件数で約4倍、面積で3倍に増えた。

 道は国に、安全保障上から土地の取得や利用の規制を求めてきた。道の担当課は法案について「要望が一定程度受け入れられた」とコメントした。

 日韓の国境線に近い長崎県対馬市では、比田勝(ひたかつ)尚喜市長が5月27日、記者会見で「自衛隊や海上保安部、警察などの隣接地が外国人に取得されると、厳しい問題になる」と法案を歓迎した。

 ただし事情は単純ではない。ピークの2018年には韓国から年間41万人もの観光客が訪れ、韓国資本のホテルもできた。比田勝市長は「国内資本による起業が少ない中で、対馬の人口減を抑制し、雇用を発生させるには(外国の投資は)必要。緩やかな体制作りが必要になる」と述べた。