星の王子さまに「不時着沼」 俵万智さんの心に残る物語

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横川結香
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(わたしの折々のことば)俵万智さん

 第1歌集「サラダ記念日」が刊行されて30年余り。歌人の俵万智さん(58)は、世の中の流れや自身に訪れる日常を三十一文字に込めて映し出しています。これまで心の琴線に触れた3つの作品について、自身のエピソードも交えて紹介します。

 

ぼくが、六つのときに、絵かきになることを思いきったのは、そういうわけからでした。(サン=テグジュペリ、内藤濯訳「星の王子さま」)

《中学生からの愛読書。物語の語り手である「ぼく」が幼い時期に夢を諦めてしまうエピソードは、何げない一言が子どもの可能性の芽を摘み取ることのないように、と子育てをする上での教えになっています。》

      ◇

 まだ、短歌という表現に没頭していなかった中学生時代。

「とにかく勉強が好きだった」という俵さんは、「星の王子さま」と出会った。

 当時通っていた中学校の英語科の教員が「よい本だから」と貸してくれた。

 若くて格好がよく、憧れを抱いていた相手。やり取りが出来ることもうれしかったが、本の内容そのものにも魅せられた。

 思春期まっただ中で、大人への懐疑心も生まれるころ。

 作中では、酒浸りだったり、計算ばかりしていたりする大人たちが登場する。

 「中学生といえば、大人の滑稽さにそろそろ気が付く年頃ですよね。大人って決してパーフェクトではないんだと。そんな批判的な視点に共感した」

 恋愛に夢中だった高校生の時は、王子さまが一輪のバラを大切に扱うことで、代えのきかない存在に育っていく筋がお気に入りだった。

 そんなふうに、とりまく状況によって心を動かされるフレーズが変わるのも大きな魅力だ。

短歌に通じるもの

 最も有名な言葉の一つである「一ばんたいせつなものは、目に見えない」は、短歌をうたう時の姿勢に通じる点があると振り返る。

 「心で見えたものを言葉にし…

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