全日本選手権唯一の国立大 和歌山大野球にサインは無用

高橋健人
[PR]

 和歌山大(近畿学生)は全日本大学野球選手権大会に出場する27校で唯一の国立大だ。新型コロナウイルスの影響により、リーグの方式が大きく変わったが、4年ぶり2回目の出場を勝ち取った。「ノーサイン野球」を掲げ、強豪私学に立ち向かう。

 今春のリーグ戦は緊急事態宣言のため4月28日から中断された。和歌山大はその時点で首位だった。再開のめどが立たず、全日本への出場校は上位4校によるトーナメントで決めることになった。

 初戦の神戸大戦は5月19日。中断期間中、大学から部活動を禁じられ、個別にトレーニングに励んできた部員たちは約1カ月ぶりに顔を合わせた。練習不足は明らかだったが、実戦勘は鈍っていなかった。同点の九回に近藤快(4年、天白)の2点二塁打で決勝点を奪い、翌20日の決勝では左腕瀬古創真(4年、水口東)が4失点しながらも完投し7―4で優勝27度の阪南大を破った。

 私学に比べれば環境面でも高校時代の実績でも劣る。他部と共用のグラウンドを使えるのは週に4回。4年生23人のうち甲子園経験者は1人のみ。主将の捕手安田圭吾(4年、駒大苫小牧)は高校では控えだった。

 そんな地方大学の大きな特徴が「ノーサイン」だ。負けたら終わりだったトーナメントの2戦を含め、大原弘監督(56)がサインを出すことはない。盗塁やスクイズなどはすべて選手の判断で、目で合図を送りながら機会をうかがう。

 桐蔭高(和歌山)で長く指導経験を積んだ大原監督が2008年に就任し、2015年からノーサインに取り組み始めた。「18歳以上はもう大人。指示と命令だけの野球は魅力がない」との考えからだ。

 変化が起きた。選手自身でプレーの意図などを考えるようになり、主体性が出てきた。練習では、まずいプレーの直後に別メニューの選手も含めて全員が集まって、同じ失敗を繰り返さないよう改善策を共有するようになった。強化にもつながり、17年春に初のリーグ優勝を遂げ、初出場した全日本で8強入りした。

 今の4年生のなかには、このときの活躍にあこがれて入学した部員も多い。その先輩たちと同じ舞台に立つ。「自分たちがどれだけ通用するのか楽しみ」と安田。初戦は21回目出場の九産大(福岡六)に挑む。(高橋健人)