ほめてあげればよかった 「ねずみくん」支えた亡き妻へ

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聞き手・松本紗知
写真・図版
(C)なかえよしを・上野紀子/ポプラ社
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 「いいチョッキだね ちょっときせてよ」「すこしきついが にあうかな?」……。なかえよしをさんと、妻の上野紀子さんの共同作業で生まれた、絵本「ねずみくんのチョッキ」。実は当初の結末は、現在の形とは違っていました。

「ねずみくんのチョッキ」(ポプラ社、1974年、累計115万部) 

おかあさんがあんでくれた、ねずみくんにぴったりの赤いチョッキ。そこへあひるくんがやってきて「ちょっときせてよ」と借りました。さるくん、あしかくん、と貸すうちに、チョッキはどんどんのびていき……。「ねずみくんの絵本」シリーズは、現在37巻まで刊行されている。

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なかえよしをさんと上野紀子さん=2017年撮影、ポプラ社提供

 僕はもともと、広告会社でデザイナーをしていました。「ねずみくんのチョッキ」を作っていた50年前の当時、頭の中にあったのが「Think small.」というフォルクスワーゲンの広告です。

 大きい新聞紙面に車がちょこんとレイアウトされた画期的な広告で、大きいことに価値があるとされていたアメリカで「小さいことは良いことだ」と打ち出して、ものすごいインパクトがあった。白い背景に小さなねずみくんが立っている絵本の表紙は、ここから着想を得ています。

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「ねずみくんのチョッキ」なかえよしを作、上野紀子絵、ポプラ社

 ねずみくんの絵本は、僕がストーリーを考えてラフスケッチを作り、それをもとに(妻の)上野(紀子さん)が絵を描いて作ってきました。

 「ねずみくんのチョッキ」が出版される前年に、ニューヨークの出版社から「ELEPHANT BUTTONS(ぞうのボタン)」という絵本を出していたんです。

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Harper&Rowから出版された「ELEPHANT BUTTONS」

 ぞうのおなかのボタンを開けるとうまが出てきて、うまかららいおん、らいおんからあしか……と続いて、最後にねずみが出てくる絵本。

 その次回作として考えたのが、「ねずみくんのチョッキ」でした。「ぞうのボタン」は、大きいぞうから始まって、小さいねずみにつながっていく。だから、逆を作ろうと。

 原稿が出来上がったころ、たまたま(児童文学者の)今江祥智さんと、ポプラ社の編集者さんが、他の絵本の依頼で上野を訪ねて来たんです。そして原稿を見た今江さんが「おもろいじゃないか」と。それで、ポプラ社さんから出していただくことになりました。

 チョッキにした理由は、「そう思いついたから」としか言えないんですよね。今思えば、帽子やパンツでは作れなかったと思うし、チョッキ以外は考えられない。

「これじゃあ寂しい」

 当初、物語の最後は今とは違っていた。

 ぞうさんが着たことでチョッ…

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