彼女たちが育てたChange.org 急成長のわけは

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文・林るみ 写真・北村玲奈
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 米国発のオンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」が注目されています。森友学園をめぐる公文書改ざん問題で赤木俊夫さんの自死の真相を求める署名は38万筆、東京五輪の中止を求める署名は41万筆を超え、2012年の日本版開設以来、最多の数が集まっています。20年の日本版の利用者は約280万人、キャンペーンは前年比2.5倍の2773件。世界で4億人が利用する「チェンジ」で拠点のある20カ国中、日本の伸び率は1位。なぜこれほど躍進したのでしょうか。日本版を立ち上げたのは現アジア・ディレクターのハリス鈴木絵美さん(37)。現在チームを率いるのはジャパン・カントリー・ディレクターの武村若葉さん(38)。力を合わせ、日本版を育ててきた2人に話を聞きました。

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Change.orgのハリス鈴木絵美さん(左)と武村若葉さん=東京都内のオフィス、北村玲奈撮影

 ――「チェンジ」を通して声をあげる人たちが日本で急増しています。どうご覧になりますか。

 武村 実は私たちも驚いています。ここ何年か、「チェンジ」が徐々に浸透し、声をあげやすくなっていたところに、コロナ禍の切羽詰まった状況下で、声をあげざるをえなくなった人が増えたと考えます。

 昨春、緊急事態宣言が出たあと、利用者は一気に増えました。その特徴の一つは、若い人たちが声をあげたこと。一斉休校要請が出ると、高校生が200件以上さまざまなキャンペーンを始めました。

 鈴木 無料でキャンペーンを立ち上げられ、名前とメールアドレスさえ登録すれば、誰でもワンクリックで署名できる気楽さが受け入れられていると思います。

 日本版開始の半年後、第2次安倍政権が始まりました。そしてコロナ禍、菅政権へ。この間、大きな問題が起こるたびに議論が尽くされていない、政治の説明が果たされていないという声があがっています。こうした声の受け皿に「チェンジ」がツールとして使われてきたことはあると思います。

誰もが声をあげられる社会に

 ――「チェンジ」は単なる署名サイトではないと言っていますね。

 武村 「チェンジ」では、規約に反さない限り、どんなキャンペーンも立ち上げることができ、私たちがその内容を決めたり、立ち上げを働きかけたりすることはありません。ただ、社会運動と縁のない人の活動を成功させるために、記者会見を開くなどの戦略のアドバイスやサポートをしたりしています。人の記憶に残るキャンペーンを時機を逃さず成功に導き、自分も声をあげていいと思える事例を作ることが私たちの使命だと考えています。コツコツとサポートしてきた成果が出たのかなとも思います。

 鈴木 「チェンジ」のサイトには「進捗(しんちょく)の投稿」という機能があり、キャンペーンを立ち上げた人が賛同者に呼びかけたり、継続的に連絡をとったりすることができます。会話を継続できるんですね。オンライン署名をすることで、自分の意思を表示し、発信者とのコミュニケーションも生まれ、会話を続けながら、次の意思表示へと続くエネルギーを備蓄できる。「チェンジ」は、みんなが立ち寄って座る「ベンチ」のような役割をしているんじゃないでしょうか。

 たとえば、今年2月、女性蔑視発言をした森喜朗氏への抗議の署名には15万筆を超える賛同が集まりましたが、以前の、職場のハイヒールやパンプスの強制をなくしたいという「#KuToo」(19年)や、都議への女性蔑視発言への抗議(14年)といったキャンペーンがなければ、あそこまで爆発的に伸びなかったのではないでしょうか。

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Change.orgのハリス鈴木絵美さん(左)と武村若葉さん=北村玲奈撮影

 ――お二人は学生のころは政治や社会運動には関心がなかったそうですね。

 鈴木 まったくなかったです。父は米国人で、母は日本人。東京で生まれて高校までアメリカンスクールに通っていました。エール大学を卒業後は現地のマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職。周りにはいつも恵まれた環境の人が多かった。いま思うと、何もわかっていなかったと思います。

 たまたま08年にオバマ氏の…

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