「田んぼの水が濁る」身延町の農家 早川の水に大量の砂

吉沢龍彦
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 富士川水系の早川で取水した水を農業用水に使っている山梨県身延町下山の農家から、「砂が混じり、水が濁るようになった」という声が上がっている。水を引き込んだ水田が砂に覆われ、稲が定着しにくくなるなどの支障も出ているという。原因ははっきりしないが、川を取り巻く環境が変化している可能性もありそうだ。

 下山地区は富士川の右岸にある。地元の土地改良区などによると、上流で富士川に合流している早川の榑坪堰堤(くれつぼえんてい)で発電用水を取水している日本軽金属から、農業用水の分配を受けて用水路に流している。古くからの取り決めに基づいているという。

 同地区で稲作をしている男性(60)によると、水の濁りは一昨年ごろから目立ってきた。水田に引き入れると一緒に砂が流れこみ、表面を覆う。「田植えをしてもよく根付かない。茎の枝分かれが進まず、収量も減ってしまう」と話す。

 5月24日に記者が取材した際には、水路の水も灰色に濁っていた。「雨の後はひどい。数日間は様子を見るしかない」。用水路からじかに取り入れるのではなく、数十メートルの水路を経由させて砂を沈ませる工夫もしているという。

 「雨の後に濁るのは昔からだ」と話す人もいるが、別の農家も「最近は雨がやんだ後もしばらく濁っていることが多い」と話した。

 県は2019年から富士川や上流の早川、雨畑川の水質を定期的に調査している。駿河湾でサクラエビが不漁になっていることを受け、静岡県と合同で調査したのがきっかけだった。

 調査結果をみると、水に含まれる砂などの固形物の量で、濁りの程度を表す浮遊物質量は、富士川の本線では環境基準(1リットルあたり25ミリグラム)を下回った時が多いが、榑坪堰堤の上流の調査ポイントである弁天橋では、その値を上回ることも少なくなかった。

 県は「雨の後に濁るのは通常の現象だが、2、3日で落ち着かず、長引く傾向が見受けられる」と話す。

 堰堤の上流で早川に合流している雨畑川では、日軽金が所有する雨畑ダムに土砂がたまり、周辺地域に浸水被害も発生。同社が土砂の除去作業を始めている。19年には、ダム湖で砂利を採取していた業者が、残った汚泥をダム直下の河川敷に野積みしていたことも明らかになった。

 国土交通省富士川砂防事務所によると、早川や雨畑川の上流付近には、日本列島を東西に分ける巨大な溝のフォッサマグナがあり、砂が堆積している。断層も走っていて地層がもろく、山腹の崩壊が起きている地点もあるという。「気候変動の影響なのか、近年は流域の雨量も増えている。土砂流入も増えている可能性は考えられる」と話す。(吉沢龍彦)