段差に側溝…カルガモ11羽、初の散歩は危険がいっぱい
茨城県取手市の六郷公民館で4日朝、卵からかえったばかりのカルガモのヒナ11羽が巣立った。近くの水田を目指して懸命に親鳥の後を追うが、初めての外の世界は危険がいっぱい。見守ってきた公民館の職員らも手を貸した。
カルガモが巣を作ったのは、建物玄関脇の花壇の茂みの中。公民館は新型コロナウイルスのワクチン接種の予約会場になっていることもあり、日中は人の出入りが結構ある。親鳥はここでじっと卵を抱いていた。
館長の武笠征男さん(76)によると、2017年から3年続けて営巣した。昨年は来なかったが、今年は5月2日に産卵を確認したという。巣立ちが近いと聞き、記者も31日から連日、様子を見に行った。コロナ禍に少しでも癒やしとなるような写真と記事を発信できればと思っていた。
今月3日午後、武笠さんから「ヒナの声が聞こえたから、明日巣立つんじゃないか」と連絡をもらい、4日は夜明け前の午前4時ごろから待った。
武笠さんや市の職員ら6人も一緒だったが、午前7時までに動きはなく、「今日は出てこないかも」とみんな、引き揚げていった。ところが――。
15分ほどすると親鳥が茂みから首を伸ばし、辺りをうかがい始めた。一度は巣に戻ったが、さらに15分ほどして顔を出し、今度はそのまま高さ40センチほどの花壇から飛び降りた。ヒナたちも続いた。急いで武笠さんに電話で連絡し、写真や動画を撮りながら親子の行き先に気をもんだ。
過去には、雨水ますや側溝のふたの穴や隙間から落ちたり、建物内に迷い込んだりしたヒナもいた。落ちるとあっという間に流される用水路も近くにある。その度に職員らが救助してきたという。
4日も、親子があらぬ方向に行かないよう、駆けつけた職員と「誘導」しながら、最後は武笠さんが網に入れて近くの水田まで運び、放した。いったん引き離された親鳥は、ガーガーと怒った様子で飛び去ったが、すぐに戻ってきて、初めて水に入ったヒナたちを連れて、青々と伸び始めた稲の間を泳いでいった。(福田祥史)
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