難しすぎる古謡「まつばんだ」、再発見の兆し 屋久島

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奥村智司
屋久島の古謡「まつばんだ」歌い継ぐ動き
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 「まつばんだ」という不思議な名前を持つ古謡が、鹿児島県屋久島にある。難曲のためか伝承がほぼ途絶えていたが、歌い継ぐ動きが出てきた。山への畏敬(いけい)の念がこもった歌詞や沖縄の音階を帯びる旋律は、島の魂と歴史を雄弁に物語る。

 午後5時、屋久島町にサックス演奏のまつばんだが響き渡る。「途絶えかけた民謡を根付かせるには」と考えた地元の高校生が「時報」を提案し、昨年11月に始まった。厳かな調べが、夕刻の山々に映える。

 「まつばんだ」の言葉自体は、会社の名前に使われるなど島内でなじみはあるものの、民謡とは知らない人も少なくない。民俗学者の下野敏見さん(92)=鹿児島市=によると、島を訪れた1960年代当時は「祝い歌」として耳にしたというが、いまや歌える高齢者はほとんどいない。

 「すたれたのは、難しすぎるからでは」と話すのは、地元でまつばんだの歌唱に取り組む緒方麗(うらら)さん(45)。「まるで屋久島のような曲」と表現するように、急な上げ下げが繰り返される音程は険しい山々が連なる地形さながら。曲調も奥深い森の神秘や威圧感をたたえていると感じる。

  2015年、国民文化祭と、島の自然・文化を住民らが学ぶ「屋久島学ソサエティ」がまつばんだを取り上げた例会があり、音楽活動をする緒方さんに歌い手として声がかかったことが契機になった。当初は楽譜を頼りにしていたが、今は「自分が屋久島を思う心で歌うこと」を心がける。

 その例会で、レ・ラ抜きの琉…

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