廃止のジュニアNISAが人気 マネーゲーム生んだ緩和

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柴田秀並
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 教育資金づくりなどを促すため、子どもの専用口座で投資すると利益が非課税となる「ジュニアNISA(ニーサ)」。利用が進まず2019年末に廃止が決まった。しかしその後に口座開設が急増。その背景は――。(柴田秀並)

 東京都内の金融機関に勤める30代の男性は早めに帰宅すると、スマートフォンネット証券の専用アプリを開いた。チェックしたのは口座の残高。含み益を合わせておよそ119万円。笑みがこぼれる。

 「税金がかからずに小金を稼いでいるんですよ」

 男性がジュニアNISAの口座を開設したのは長男が未就学児だった4年前。この制度なら、株や投資信託で利益が出た場合、子どもが18歳になってから引き出せば、本来かかる約20%の税金が非課税になる点に魅力を感じた。

ジュニアNISAとは?

子どもの資産形成を名目に、口座の名義人が0~19歳であれば、年80万円の新規投資を上限に配当や売却益が非課税になる制度。管理・運用は原則名義人の親権者や親族ら。配当や売却益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)の「子ども版」の位置づけだ。株や投資信託は本来、購入時よりも高く売れたり、配当を受け取ったりして得た利益に約20%課税される。18歳までに口座から現金化すると通常どおり税金がかかったが、23年末で制度が終了するのに伴い、24年以降は年齢に関係なくいつ引き出しても課税されなくなった。NISAは、「Nippon Individual Savings Account」の略称。

 当初の目的は長男の大学進学に備えた資金づくりで、有名企業の株式を購入して長く保有しようと考えていた。だが、最初に80万円近くで購入した大手商社株が値上がりしたのを見て、いま売れば利益が出ると考えた。10カ月ほどで売却し、利益は約7万円に。「これで味をしめた」

 男性は株を買っては1年以内に売る取引を繰り返している。もちろん損失を被る可能性もあるが、現状は利益が膨らんでいる。「気長に値上がりを待つというより、短期で『小金稼ぎ』を狙うための口座。本来の趣旨に反していることは、わかってますけど……」

いつ引き出しても非課税に

 金融庁がジュニアNISAをスタートさせたのは16年。子どもが大人になるまで安定的に運用してもらい、教育資金などに充ててもらうことが目的だった。ただ税制を担う財務省内には当初から、利益が出ても非課税になる点を踏まえ、「マネーゲームを誘発するだけ」との声もあった。

 新規の口座開設は伸びず、「思うように利用されていない」(金融庁)ことを理由に、23年末で廃止されることが19年末に決まった。スタートからわずか4年だった。

 ところが、新規の開設数はその後急増。それまで1万件前後で推移していた四半期ごとの開設数は、3万件超に。口座数は20年末時点で約45万件となり、1年で10万件ほど増えた。

 その背景には、廃止と同じタイミングで決まった、さらなるルール緩和があるとみられている。

 ジュニアNISAのメリット…

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