奈良がわかる 奈良にそびえる塔

岡田匠
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 はなくいどり 薬師寺の国宝・東塔で、1階部分の初層が特別開扉されているね。

 A 約12年にわたる全面的な解体修理事業が昨年12月に終わったんだ。特別開扉が来年1月16日まで予定されている。生駒基達(きたつ)副住職は「新型コロナウイルスで世の中が暗くなっている。東塔にお参りしてもらい、不安を和らげてほしい」と話していたよ。

 は 東塔の屋根は六つで六重塔に見えるけど、実は三重塔なんだね。

 A 大きな三つの屋根の下に、それぞれ小さな屋根が付いているよね。「裳階(もこし)」と呼ばれる飾り屋根だよ。だから東塔は三重塔なんだ。調和のとれた大小の屋根のリズミカルな美しさから「凍れる音楽」とも称せられるね。約1300年前、薬師寺の創建当初から残る唯一の建物だよ。

 は 東塔は高さ約34メートルもあるけど、もっと高い塔は奈良にないの?

 A 興福寺の国宝の五重塔が高さ約50メートルだよ。京都・東寺の五重塔が高さ約55メートルで、これに次いで国内2番目の高さなんだ。奈良時代聖武天皇の妻の光明皇后の発願でたてられ、その後、5回も焼失したけど再建されてきた。今の塔は室町時代の1426年ごろの再建だね。興福寺の森谷英俊(えいしゅん)貫首(住職)は「五重塔は昔も今も古都・奈良のランドマーク」と説明してくれたよ。

 は その五重塔で修理が始まるんだって?

 A 屋根の傷みも激しくなってきたからね。大規模な修理は明治時代以来、約120年ぶり。実は昨年度から事前調査が始まっている。本格的な修理に入ると、五重塔は素屋根に覆われ、しばらく見られなくなるよ。

 は そもそも塔は、なんのためにたてられたの?

 A 仏教を開いたブッダが入滅した後、遺骨を納めるためストゥーパと呼ばれる塔がたてられた。ストゥーパは卒塔婆(そとば)と訳された。釈迦の遺骨は仏舎利と呼ばれ、日本の寺でも塔をたてて仏舎利を納めたんだ。

 は 昔の奈良には、もっと多くの塔があったんだね。なくなった塔は?

 A 大安寺には九重塔があったと伝わっている。東大寺には大仏殿の南側に東塔と西塔がたっていて、ともに七重塔だったんだ。元興寺には五重塔があったけど、幕末の火事で焼けてしまったんだよ。

 は いまの奈良には薬師寺興福寺のほかに、どんな塔があるの?

 A まず思いつくのが法隆寺だね。世界最古の木造の五重塔だ。近くにある法起寺の三重塔、法輪寺の三重塔とあわせて「斑鳩三塔」と呼ぶよ。このうち法輪寺の三重塔は戦中の1944年に落雷で焼け、幸田露伴の娘の幸田文をはじめ多くの人の尽力で75年に再建されたんだ。談山神社の十三重塔は世界で唯一の木造の十三重塔といわれる。

 室生寺には高さ約16メートルの五重塔があるよ。屋外にたつ塔としては国内最小で、1998年の台風で壊滅的な被害を受けたけど、その後、修復されたんだ。塔に限らず、仏像もお堂も、いま当たり前のように見られるのは、「次の世代に大切に伝えよう」という先人たちの強い思いがあったからなんだね。(岡田匠)