走者の前後は車列30台 聖火リレーの沿道ルポ@新潟

西村奈緒美、緑川夏生、戸松康雄
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 糸魚川市から始まった新潟県内の聖火リレーが5日、村上市で終わった。新型コロナ対策として全国各地で無観客、公道中止と実施方法が変わる中、県内は「感染が落ち着いている」(県)として173人が予定のルートを走った。関わった人々の思いや雰囲気を知ろうと、記者が2日間、沿道を歩いた。

 リレーは、約1万人の走者が121日間で全国859市町村を巡る。14市町村を走った県内では、1自治体の走行距離が約3キロ、時間は約20~70分。長岡市の沿道の女性は「あっという間やねえ」と名残惜しそうだった。

 ランナーは、実に30台以上の車両に挟まれて走ってくる。先導のパトカーのほかに、スポンサーの日本コカ・コーラ日本生命、NTT、トヨタ自動車の車が続く。トラックを改造した車からは音楽が鳴り響き、荷台の上で進行係がマイクで「日本を元気にしていきましょう」「素敵な思い出を作って下さい」と呼びかけていた。その車列の前ではスポンサーの商品やグッズを無料で配ったり、踊ったり。新潟市の沿道で見ていた飯野良子さん(66)は「ランナーが走るだけだと思っていたからびっくり。華やかな雰囲気でパレードを見ているようだ」と楽しんでいる様子だった。

 ただ、観衆の中にも、コロナ禍での五輪開催を複雑に思う人が少なくなかった。柏崎市で撮影していた男性(65)は「今は何をするにしてもコロナと隣り合わせ。政府は『やる』という決意表明を繰り返すだけじゃなく、『どうなれば中止にするか』というシナリオも提示するべき。そうしないと不安で仕方ない」と話した。1カ月前に妻の会社で感染者が出たため、食事も寝室も別々に。大会チケットも当選して持っているが、会場に行くかはためらっているという。

 同市の社会人水球チームからは4人が日本代表に選ばれた。沿道沿いの飲食店の店主は「選手たちが食べに来てくれることもあるので応援したい気持ちはやまやまだが、そういう雰囲気になってない」と語る。「IOC(国際オリンピック委員会)や政府がゴリ押しするほど、気持ちがなえてしまう」と話していた。

 一方、同市内のリレー区間の沿道で書店を夫と経営する阿部千恵子さんは「目標があれば人も街も復興する。五輪も開催できればコロナ禍の光になるはず」と期待を込めた。2007年の中越沖地震では店舗兼自宅が傾く被害を受け、床には大きなひびが入った。店を畳むことも覚悟したが、「大変な時こそ、子どもたちが本に触れる時間を作りたい」と、ブルーシートをつけたまま4日後に店を再開した。その時の思いがあるという。

 リレーの喧騒とは距離を置く人も。新潟市の川沿いで友人と音楽を聴いていた男性(22)は「クラブイベントを我慢しているけど、五輪のために自粛してきたわけじゃない。政府のコロナ対策は五輪のスケジュールありきで行われている。五輪に使う予算は医療や失業者にまわすべきだと思う」と語った。

 走者やボランティアにも聞いた。新潟市内を走った地元出身の歌手、小林幸子さんは5日、各地でリレーの辞退が相次いだことに関連し、「断る理由も、参加する理由もどっちも成立する。私は地元の人に元気になってほしくて走った」と語った。一方、柏崎市を走った医師は「人が集まるイベントに医療者が出ることへの後ろめたさがあった。頑張っている医療者にざんげのような気持ちが湧いてきた」と語った。

 長岡市でボランティアをしていた50代男性は「スポーツの裾野はもっと広いものだと思うが、誰のための五輪なのかわからなくなってきた。国民の共感が得られる形で進んでいないのが何とも残念」と話していた。(西村奈緒美、緑川夏生、戸松康雄)