震災忘れない、石巻に伝承館開館 語り部や津波の映像も

原篤司
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 津波で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市の南浜地区に6日、国や県が整備してきた「みやぎ東日本大震災津波伝承館」が開館した。訪れた市民や関係者は、日頃から災害に備え、命を大切にする心が、ここから広まることを願った。

 この日の開館式典には、津波被害を受けた県内沿岸部の自治体の首長や、震災伝承団体の代表らが出席。村井嘉浩知事は式辞で「一人でも多くの人に震災の記憶と教訓を胸に刻んでもらえるよう、県内各地で震災伝承に取り組む方々と連携し、しっかり取り組みたい」と述べた。

 式では、「がんばろう!石巻」の看板を津波で流された自宅兼店舗の跡に立てた黒沢健一さん(50)が記念講演に立ち、看板に込めた思いや経緯を紹介。「次の災害が来た時に犠牲を出さないための県内各地での伝承や防災の活動を、協力し合って継続させる場所ができた」と話した。

 館内には、語り部の話や実際の津波の映像が流れるシアターや、復興や救助などにかかわった人たちの証言を視聴できるモニターがある。国土交通省東北地方整備局も、震災時の被害把握や被災地につながる道路の確保といった緊急対応を紹介する展示を置いた。

 式の後、午後3時からの一般公開に一番乗りした男性(67)は、伝承館が建った付近で生まれ育ち、被災して転居を余儀なくされた。「思い出したくないけど、忘れちゃいけないという複雑な気持ち。それでもここに来てみんなに震災のことを知ってほしい。一つしかない命だから」と話した。

 前日の5日には、近くの住民や展示に協力した人たちを招いた内覧会があった。

 展示映像に出演し、被災した石巻市中心部の横丁再生の取り組みを語った日本料理店主の阿部紀代子さん(59)は「展示を通じて、私自身も県内各地の被災状況や伝承、復興の活動を改めて知ることができた。ここで何かをつかみ、現地に行ったり調べたりしてみてほしい」と話した。

 伝承館がある石巻南浜津波復興祈念公園付近の「かどのわき町内会」の本間英一会長(72)は、「立派すぎる公園や施設が次々にでき、街の昔の様子とはかけ離れてしまったが、人がたくさん来てくれるのはうれしい。きれいに整備された姿を、復興のために通ってくれていたボランティアの人たちに見せたい」と語った。

 津波伝承館は入場無料で、午前9時から午後5時。休館日は月曜と祝日の翌日で、震災月命日の11日はそれに関わらず開館する。(原篤司)