第2回進撃の巨人、中盤の変貌に「二つの真実」 宇野常寛さん

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構成・黒田健朗
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 11年半の長期連載を終え、9日に最終34巻が発売された人気漫画「進撃の巨人」(諫山創さん作)。人間を襲う謎の巨人と人類の戦いなどを描いた作品だが、評論家の宇野常寛さん(42)は「中盤で実質的には別の漫画に変貌(へんぼう)した」と指摘する。完結を機に作品を読み解いてもらった。(物語の展開に触れる部分があります。ネタバレ注意です)

うの・つねひろ 1978年生まれ。評論家。批評誌PLANETS編集長。著書に「ゼロ年代の想像力」(早川書房)、「若い読者のためのサブカルチャー論講義録」(朝日新聞出版)、「遅いインターネット」(幻冬舎)など。

 初期の「進撃の巨人」は、壁の中の世界に閉じ込められている人類が、巨人という未知の強大な存在に自分たちの生を否定されるという圧倒的な敗北感、無力感とそこへの反発が特徴的です。作者の諫山さんがどこまで意識していたかはわかりませんが、現代の私たちにも共通する、目に見えないシステムの中で生かされている不安のようなものがグロテスクで、不安定な絵として視覚化されているところに何より魅力を感じていました。特に世界観を決定している巨人のデザインは圧倒的なものがありました。

 巨人に人間たちが剣技で対抗するための「立体機動」という戦法のアイデアもアクションの見せ方として素晴らしかったと思います。このアイデアを生かしたアニメ版の仕事にも卓越したものがありました。

 もちろん、ヒロインの人物像などに表れているジェンダー感にアナクロなものを指摘することもできるでしょうし、結末などの展開に既視感を覚える人も少なくないでしょう。しかし何より最大の論点は、中盤で、実質的には別の漫画に変貌したことの評価ではないかと思います。

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