「大豆田とわ子」のオシャレな音楽 作曲家が語る秘話

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編集委員・吉田純子
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 「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ・フジテレビ系、火曜午後9時)では、坂元裕二の繊細な脚本の世界観を支えるべく、丁寧に編まれた音楽も高い評価を得ている。ドラマで使われた音楽を集めたCD「Towako’s Diary―from“大豆田とわ子と三人の元夫”」(日本コロムビア)も9日に発売される。作曲と選曲を一手に受ける坂東祐大に、制作秘話を含め、この作品に懸ける思いを聞いた。

手間をかけることが、面白くてたまらない

 ――「大豆田とわ子と三人の元夫」(以後「とわ子」)の音楽が、オシャレだと評判です。

 うれしいですね。コンセプトが「新感覚のロマンチック・コメディ」なので、オシャレにつくるということに関しては特にこだわりがありました。ただ、そうはいっても坂元さんの「ロマンチック・コメディ」が一筋縄でいくわけないのですが(笑)。

 ――他の坂元さんの作品を、これまで見たことは?

 残念ながら、まだ全部は見れていなくて。「とわ子」が終わるまでは、なるべく見ないようにしようと思ってます。世界観に影響を受けてしまいそうなので。この仕事が終わってから、いろいろ見せていただこうと思っています。楽しみです。

 ――坂元さんの紡ぐ言葉の濃密さを前に、音楽が対話の邪魔をしかねないという怖さを感じることもあるのではないでしょうか。

 そうなんです。なので、今回は選曲もさせていただき、MA(整音の確認)にも全部立ち会っています。曲が足りなくなると、そのつど書き下ろして。とにかく時間が、手間がかかります。でも、僕はこの作品には、可能な限り手間をかけたい。作品に携わっている時間が、とにかく幸せでたまらないんです。

 ――鳴り物(パーカッション)の楽器のバリエーションが豊かです。登場人物のちょっとした動きに、いろんなリズムを丁寧に添わせることによって、それぞれのキャラクターがよりコミカルに、生き生きと動き出します。

 「このシーンには、この人には、この曲を使う」といったルールのようなものは、なるべくつくらないようにしています。定番にしたのは、オープニングの「今週の大豆田とわ子は……」のナレーションにつく「序曲」だけ。

 たとえば、誰もいないとわ子のオフィスで、角田晃広さん演じる鹿太郎ととわ子が、2人の出会いのきっかけとなった社交ダンスを踊るシーンがありましたよね。あの「鹿太郎のワルツ」は完全な書き下ろしです。

坂元さんのドラマにはパターンがない

 ――とわ子の親友だった、かごめちゃんのお葬式のシーンで流れていた曲の陽気さが衝撃で、しばらく呆然(ぼうぜん)としました。

 あれは、かごめちゃんが好きだった曲という想定なんです。マイナーコードで明るい曲を、というリクエストをいただいて、それでいろいろ考えて、何となく、オールディーズな雰囲気の曲にしてみたらどうかなと思って。

 ――ほんとうに大切な人が亡くなった時の、心がついていけない感じに重なって、すごくリアルでした。

 坂元さんの脚本に、いつも僕が良い意味で悩まされているのは、それぞれの感情にほんとうにいろんな表情があって、それにどう音楽を寄り添わせるか、っていうことなんです。たとえば「寂しい」という気持ちひとつとっても、毎回、人によっても、まったく違いますよね。だから、「切ない曲」「寂しい曲」を1本ずつ書いておけばあとは誰かが編集してくれる、はい終わり、みたいなことは絶対にできないんです。

 ――別れひとつをとっても、多様な別れ方があるということですね。人生の数だけ。

 すでにつくった曲をもう1回別のシーンに使うときも、まったく同じ感触になることは、なるべく避けるようにしています。「お決まり」のような音楽を、なるべく作りたくないというか。

 ――人生に同じ瞬間は二度と帰ってこない。音楽は、そのアレゴリーということですね。

 人生にパターンがないように、坂元さんのドラマの登場人物にもパターンがない。僕はそう、感じています。

使っている楽器は?

 ――「とわ子」では音楽は、単なるBGMではなく、重要な質感の一部になっています。とわ子の背中で、漫画チックに翼がばさっと広がる場面のサウンドも面白かったです。

 あれは典型的な現代音楽の手法です。ピチカートをディレイで増幅させるんですね。

 ――エレクトリックな装置を使う時もあるし、アコースティックな楽器を使う時もある。

 基調としているのはオーケストラなんですが、日常のなかで頻繁にオーケストラが鳴り響くのって、ちょっとリアルじゃないですよね。オープニングは非日常の別空間だから、大編成のものはそこに絞って、あとは小編成のアンサンブルかアコースティックで人物の心情を紡いでいくようにしています。

 ――具体的には、どういう楽器を?

 僕が代表を務めているEnsemble FOVEのメンバーが中心ですね。クラシックの奏者たちでつくるアンサンブルです。それぞれの個性がぐっと前面に出るように、結構当て書きをしています。いろんな楽器の持ち味も引き出せたらいいなと思っています。

 ――リコーダーが可愛いですよね。あれがきこえると、元夫たちの愛嬌(あいきょう)がより際立ちます。

 ああ、あれは演奏している菅…

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