ワクチン接種 認知症入所者の「本人同意」で悩む施設も

新型コロナウイルス

平塚学
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 新型コロナウイルスのワクチン接種で、認知症の高齢者が入所する施設の担当者らが頭を悩ませている。国が接種の前提とする「本人の同意」をどうとるべきか。現場によって対応が分かれている。

 宮崎県内のある特別養護老人ホームでは4月、ワクチン接種を前に約60人の入所者に意向を確認した。希望したのは12人。他の多くの入所者は意思確認ができず、接種を断念したという。施設の事務長は「認知症が進み、呼びかけにも反応しない人がいる。本当は全員に打ってあげたかった」と話す。

 厚生労働省予防接種法にもとづき、ワクチンの接種には本人の同意が必要としている。新型コロナウイルスワクチンの接種日当日までに記入する予診票にも、本人が希望しているかを記す欄がある。ただ、認知症の高齢者には意思確認が難しい人もいる。全国各地の自治体から問い合わせがあったことから、厚労省は4月23日付で各自治体にあらためて通知を出した。

 通知では、意思確認が難しい場合の対応について「季節性インフルエンザ等の定期接種と同様」に、「家族やかかりつけ医、高齢者施設の従事者など身近な方々の協力を得て、意向を丁寧に酌み取る」などとした。厚労省予防接種室の担当者は「今までの予防接種と同じように、現場で柔軟に、適切に対応してもらうための通知」と説明する。

 宮崎県内の別の施設では、約70人の入所者の多くが認知症だが、希望しなかった5人以外は新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種をした。施設はこれまでのインフルエンザ予防接種と同じ対応で、家族に同意を取って本人同意とみなした。施設長はクラスター(感染者集団)発生のリスクを避けたかったとし、「本人の同意が必要なら、9割以上がワクチンを打てなかった」と打ち明ける。一方で、「ワクチンの副反応が出た場合は責任を取らされるのかもしれない」と心配もしている。

 県内の複数の自治体や介護施設によると、インフルエンザのワクチン接種では家族の同意を本人同意とみなすことは実際に多いとみられる。厚労省でも「こうした現場の運用があることは把握している」といい、新型コロナのワクチン接種で同様の対応をした場合についても「予防接種法に罰則規定はないので、責任は問われない」という。

 ただ、その上で、厚労省の担当者は取材に「家族の同意は本人同意の代わりにはならない」と強調。「認知症患者に対する医療行為については、本人の同意をどうするかは専門家の間でも明確な結論が出ていない」と理由を説明した。

 公益社団法人「認知症の人と家族の会」(本部・京都市)の代表理事、鈴木森夫さん(69)は厚労省通知について「副反応による訴訟リスクを避けつつ、精いっぱい文面を作ったかもしれないが、あいまいで、さらに混乱を招いている」と指摘。「現場任せではなく、踏み込んだ指示を出すべきだ」と話す。(平塚学)

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