7世帯だけのための情報誌が創刊11年 ネタ尽きぬ理由

白石和之
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 集落の全7世帯だけのために発行している小さな情報誌がある。新潟県長岡市川口中山の「竹田集落」に埼玉県川口市から移り住んできた会社員、砂川祐次郎さん(50)が手描きで作るフリーペーパーだ。創刊から11年で60号を超えた。

 情報誌は「ぼちぼちたけだ」。A3判の紙を半分に折り裏表を使う4ページ建て。2010年春の創刊以来、毎年5、6回出してきた。最新は今年3月発行の第62号。トップ記事は、集落にある「キノコ展望台」の屋根が壊れていたという報告。隣のページには川口地域のおいしいお店の案内。裏は集落の地図をイラストにした塗り絵だ。

 砂川さんが生まれ育った川口市から集落に移ったのは1998年。泉質のいい温泉とおいしいお酒がある移住先を探して集落に来たら、たまたま空き家があった。すぐに両親とともに3人で移住した。

 集落は当時、長岡市と合併する前の旧川口町の「大字(おおあざ)中山字(あざ)竹田」。砂川さん家族を加えて13に増えた世帯は徐々に減り、2004年の中越地震後には7世帯になった。

 集落には世帯の代表者が集まる常会がある。その総代に砂川さんが就いた07年、中越地震の被災地域の復興活動に従事する地域復興支援員制度が始まった。川口に入った支援員たちと「集落が元気になることをやろう」と相談して始めたのが、遊歩道の整備や集落の案内板作りだ。

 集落自慢の景色が見える場所などに立てるため、砂川さんが下絵を描き、住民たちが色を塗ったり設置したりした。雪深い冬にはかんじきウォークを企画。準備や作業に住民が集まりわいわいやるのが楽しい。

 でも、集まりに出てくるのは各世帯から1人だけ。ほかのみんなが「何をやっているのか分からない」という状況は避けたい。そのために思いついたのが情報誌だった。ネタがたまったら家で酒を飲みながら1人で書く。無理をしないのが続ける秘訣(ひけつ)だ。

 里帰りする子供たちにも渡せるように、毎号30部ほどコピーし各世帯に配る。おばあちゃんたちがお礼に缶ビールや採れたての野菜、夕食のお裾分けをくれる。

 集落の世帯数はいまも変わらないが、子どもたちは大きくなって街に出て、住民は20人を切った。緩やかに高齢化も進む。でも、みんな元気だ。「7世帯だから可能なこともある。無理せず、ニタニタと笑いながら、これからもみんなで楽しめることを続けたい」と砂川さん。情報誌に書くネタもつきそうにない。(白石和之)