職域接種、初日は500超が申請 中小企業には課題も
新型コロナウイルスのワクチンを職場で接種する「職域接種」の21日スタートに向け、政府は8日、受け付けを始めた。打ち手は確保できるのか。地元のお年寄りより早く打ってもいいのか。悩む企業は少なくない。
職域接種では、企業や大学が接種の体制を決めて政府に申請する。企業内の診療所で実施するパターンのほか、医療機関に企業まで出向いてもらったり、逆に従業員が医療機関に出向いたりするパターンも想定される。
ワクチンを保管する冷凍庫やワクチン、注射針を国から受け取り、最速で21日から実施する。政府関係者によると、8日は500超の会場での接種の申請が企業や大学からあった。
JR東日本の深沢祐二社長は8日の記者会見で申請したことを明らかにした。「鉄道を安定的に運営するうえで接種を早めることは非常に意味がある」
東京と仙台の2施設で21日から打ち始める。駅のホームに立つ係員や、信号機の制御、車両のメンテナンスなどに関わる従業員ら約2万2千人の接種を年内に終える計画だ。
ソフトバンクも8日に申請した。社員や家族、携帯電話の販売代理店員ら約10万人を対象とする。産業医や看護師など約40人をすでに確保したという。
8日は、楽天グループや野村ホールディングス、ビックカメラ、アイリスオーヤマ、損害保険ジャパンなども申請した。損保ジャパンは、従業員の間での優先順位は未定。「時間との勝負。走りながら考えるべきだ」と、親会社SOMPOホールディングスの桜田謙悟社長は話す。
申請を見送った大企業も珍しくない。
トヨタ自動車やホンダ、日産自動車はいずれも実施する方向だが、8日の申請は見送り。「決めるべきことが多くて間に合わなかった」と、ある大手の広報担当者は打ち明ける。
お年寄りの接種があまり進んでいない地域に工場を構えている、ある車メーカーは「高齢者より先に従業員が接種していいものか」と悩む。
日立製作所は、診療所などの設備が整っている首都圏の一部事業所での実施を検討しているが、接種は早くても7月に入ってから。機材の調達などを急ぐ。全従業員への接種をめざす三菱電機も詳細が詰め切れていないという。
職域接種は、まずは従業員が1千人以上の事業所から始まる。政府内の調整を担う河野太郎行政改革相は「1千人ないところをどうするか、スキームを考えていかなければいけない」と語る。
中小企業にとってワクチンの打ち手や接種会場の確保など課題は多い。
大阪府東大阪市の野田義和市長は4日の会見で、地元の商工会議所に協力を要請していることを明らかにした。「会員ではない企業も含めて、市内の中小企業をひとつも取りこぼさない」と話した。市と商工会議所の計画づくりは、これからだ。
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