短歌・俳句が刻む生きた証し ハンセン病患者の本出版

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編集委員・大久保真紀
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 あなたはきっと橋を渡って来てくれる――そんな副題のついた単行本「訴歌(そか)」(皓星(こうせい)社)が出版された。全国のハンセン病療養所で詠まれた短歌や俳句、川柳約3300が収録されている。差別や偏見を受け、隔離生活を強いられた患者たちの喜怒哀楽の人生が詰まった一冊だ。「待っています。あなたはいつかきっと私たちのことを知り、理解してくれると思うから」。副題は、患者たちの社会への訴えでもある。

 企画・編集をしたのは、東京都在住の編集者、阿部正子さん(70)。6年前に三省堂を退職し、俳句・短歌の辞典づくりをする中で「ハンセン病文学全集」(皓星社、全10巻)に収められた短歌や俳句、川柳に出会った。きょうだいで収容された患者はこう詠んでいた。

 療養所につれ行かるとも知らずして弟は汽車の旅をよろこぶ

 作品を読み、全員が後世のために、歌に思いを託していると感じた。「どの作品にもベースに『怒り』があり、その怒りをたわめるようにして巧みな表現で解き放っている」

 一般の人でも手にしやすい形にしようと、6歳から80代まで約1100人の作品を全集から抜粋。それらを「収容の日」「赤蜻蛉(とんぼ)」「母の便り」など同じテーマで選び出して並べた。

 たとえば「隠れ病む子」の項にはこんな歌がある。 一年をうすぐらき部屋にすごしたる時を思ひてさみしみにけり

 1941年の作品で、尋常小…

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