首相、はぐらかし長広舌 「切り札」頼みで深まらぬ討論

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三輪さち子 吉川真布、菊地直己
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 菅義偉首相になって初めてとなる党首討論が開かれた。秋までにある衆院選を見据え、立憲民主党枝野幸男代表らが、新型コロナウイルス対策や東京五輪パラリンピック開催の是非などで説明を迫った。これに対し、首相はワクチン接種と五輪開催を強気に訴える戦略をとった。野党は首相の説明を「ゼロ回答」とみなし、内閣不信任案の提出も視野に対決姿勢を強めている。

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、初めて行われた党首討論。仕掛けたのは菅首相の方だった。

 「せっかくの機会だ。私自身のコロナに対する考え方を明快に述べたい」

 枝野氏の最初の質問を受け、首相はこう切り出した。手元には付箋(ふせん)がびっしりと貼られた大きなファイルがあった。

 「世界のさまざまな国で、ロックダウン、外出を禁止する厳しい措置をしても(感染を)収束させることができなかった」とし、「ワクチンを接種することによって大きな成果を上げている」と主張。その上で、「なんといってもワクチン」「ワクチンこそが切り札」と訴えた。

 首相は、全国での接種が「順調に進んでいる」ことに自信を深める。「今年10月から11月にかけて、必要な国民、希望する方、すべての(接種を)終えることも実現したい」と新たな目標を打ち出した上で、「感染対策ワクチンが出てから大きく変わった」と言い切った。

 ワクチン接種を「切り札」として強調する首相に対し、枝野氏は、いま10都道府県に出されている緊急事態宣言をどう解除するのか、その判断基準を示すよう首相に迫った。

 枝野氏はワクチン接種が想定通り進んでも「集団免疫ができる状況は秋になる」と指摘。東京都に関して、新規感染者が1日50人以下になるなどの厳しい基準をもって解除すべきだと訴えた。

 首相は、東京五輪パラリンピック開催の是非についても、用意周到だった。

 国会などで首相は「国民の命と健康を守っていく。これが開催の前提条件である」などと答弁していた。

 枝野氏がこの発言の真意を問いただすと、首相は質問に答えようとせず、「オリンピックについても、私の考え方をぜひ説明させていただきたい」として、枝野氏の持ち時間である30分のうち、6分超にわたる長広舌をふるった。

 首相は、海外から来る選手や関係者の人数を9万人からさらに絞り込むことを表明。また、海外メディアには「GPSを使って行動管理する」と強調した。

 続けて、首相は前回の1964年東京五輪について「当時は高校生だった」などと思い出を2分半も語った。「東洋の魔女と言われたバレー選手」「マラソンのアベベ選手も印象に残る」「柔道のヘーシンク選手に、オランダの役員が抱きつくのを制して……」

 コロナ対策のため、議員の傍聴は制限され、ヤジも控えられていたが、この時だけは、野党側から「長いよ」「そんなの聞いていない」との声が上がった。枝野氏は「五輪を開催して命を守れるのかが注目されている。ふさわしくない話だ」と批判した。

 枝野氏は、困窮する事業者への支援策が必要として、補正予算の編成を求めた。首相は「予備費の繰り越しが30兆円ある」と拒否。枝野氏は「支援が届いていない人の悲鳴が届いていないのか」と批判。枝野氏は最後に「残念ながら、『五輪も大丈夫』『次のリバウンドもない』というメッセージにならなかった。危機感も責任感も感じられなかった」と語った。(三輪さち子)

不信任案提出「現状できない」 一転の思惑

 「政権を代えるしかないと確信した」

 首相との討論後、枝野氏は記者団にこう語り、内閣不信任案を提出する可能性を示唆した。10日に野党党首会談を呼びかけて対応を協議する。

 そもそも今回の討論は、枝野…

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