1千万円 高校生に託してみた 異例の町おこし 富山

野田佑介
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 高校生に1千万円を託し、自由な発想で地域を盛り上げてもらおう――。そんな試みが富山県南砺市で始まった。人口流出に悩む市が企画した異色の町おこしプロジェクト。若者が主体となってにぎわいを生み出し、地元愛を高めることで将来的な定住人口の増加につなげる狙いだ。

 「映画やドラマをつくりたい」「ユーチューバーを呼んで南砺をアピールしたい」……。5月23日、市役所で開かれた初めてのオリエンテーションで、高校生たちが活発な意見をかわした。参加する31人は市内在住または市内の高校に通う生徒だ。若者が町に愛着を持てるような企画の立案・運営などを1千万円を元手に担ってもらう。11月ごろの実現を目指す。

 南砺福野高校3年の男子生徒は「今まで大人や行政がやっていたことを高校生ができるのは新鮮。他の町の人たちも参加できるイベントを考えたい」。南砺平高校2年の女子生徒は「高校生がまちを盛り上げられると聞き、おもしろそうだと思った。南砺のことを広く知ってもらえるようにしたい」と意気込む。

 プロジェクトは、昨年10月、田中幹夫市長が地方移住に関するイベントで、慶応大学の若新雄純・特任准教授とオンラインで対談したのがきっかけ。福井県鯖江市で女子高校生が町づくりに参加する「JK課」をプロデュースしたことで知られる若新氏から「高校生に1千万円を託してみては」とにぎわい創出策を提案されたという。

 提案を受け、市は地元の高校生らに聞き取り調査。すると、まちの印象については「やりたいことがない」「つまらないまち」との酷評が並んだが、一方で、1千万円プロジェクトには「やってみたい」などといった声が集まり、事業化を決断。事業費のうち500万円については、衣料品通販大手「ZOZO」創業者の前沢友作氏からふるさと納税として寄せられた寄付を充てた。

 若新さんもコーディネーターとして招き、アイデアの実現に力を貸してもらう。若新さんは初回のオリエンテーションで「(このプロジェクトは)何が正解か分からない。うまくやろうと思いすぎないで、まずは自分たちが楽しもう」と呼びかけた。

 市によると、15~64歳の生産年齢人口は、約3万3千人(2005年)から10年後の15年には約2万7千人まで減少した。プロジェクトを担当する南砺で暮らしません課の担当者は「この取り組みを通じて地域や若者世代のネットワークをつくってもらい、将来的には南砺に戻ってきてくれる人や移住者が増えていけばありがたい」と話している。(野田佑介)

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