「SOGIハラ訴訟」同性パートナーとの扶養関係問う

川村さくら
[PR]

 戸籍上で同性のパートナーとの内縁関係を認めず、扶養手当などを支給しなかったのは憲法が保障する「法の下の平等」に反するとして、元北海道職員が9日、道と地方職員共済組合を相手取り、手当相当額など約483万円の損害賠償を求めて札幌地裁に提訴した。弁護団によると、同性間の扶養関係が認められるかを問う訴訟は全国初という。

 提訴したのは札幌市社会福祉士、佐々木カヲルさん(51)。戸籍上は女性だが、自身の性について「男ではなく女ともいえない」と自認する。同性パートナーと同居し、自身の住民票に編入させている。

 訴状などによると、道や共済組合の基準では、内縁関係の相手も扶養親族に含まれ、手当の支給対象となる。佐々木さんは道職員だった2018~19年、主婦をしていたパートナーについて、扶養手当の支給や寒冷地手当の増額を道や組合に求めたが、いずれも「同性間に内縁関係を認めることはできない」として拒否された。佐々木さんは性的指向によるハラスメントだと感じ、退職した。

 「性的少数者の中には、本来与えられるはずの権利を、はじめからあきらめている人が多くいる。私は『ふつう』を求めて闘いたい」

 提訴後の会見にのぞんだ佐々木さんは、はっきりとした口調で訴えた。

 佐々木さんは、札幌市のパートナーシップ宣誓制度を利用したり、本籍地を同一にしたりして、夫婦としての実態を対外的に表明することに努めた。扶養関係が認められず、共済保険に入れなかったため、パートナーの国民健康保険料を佐々木さんが払ったという。佐々木さんは今回の請求に、本来であれば払わないで済んだ保険料の額も含めた。

 道は「職員間の公平性の確保」などを理由に手当の支給を拒否した。これに対し、佐々木さんは「私たちを公平に扱わないことが、他の職員にとっての公平なのか。私たちの公平はどこに行くのか」と訴える。

 佐々木さんは、性的指向と性自認を示す「SOGI(ソジ)」へのハラスメント(嫌がらせ)を知ってもらいたいと、今回の裁判を「元道職員SOGIハラ訴訟」と名づけた。「SOGIは、すべての人に関係する言葉。性的少数者の問題だと他人事にせず、人権問題としてとらえてほしい」

 佐々木さんにとって朗報もある。今年3月、同性どうしの結婚が認められないのは違憲だとして、道内の同性カップル3組が国に損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定が憲法14条に違反するとの初判断を示した。

 弁護団は「内縁相手が同性であっても異性であっても、扶養にかかる費用や補償の必要性は変わらず、道や共済組合の決定は、真にやむをえない区別ではなく、不当な取り扱いだ」と訴えている。(川村さくら)

 ◇

 「SOGI」とは、どの性を好きになるかを表す「性的指向(Sexual Orientation)」と、自分の性別をどう考えるかを表す「性自認(Gender Identity)」の頭文字を取った言葉だ。

 性的少数者に限らず、あらゆる人に当てはまる考え方。国連などの国際機関に加え、日本国内でも使用が増えている。

 「なくそう!SOGIハラ 実行委員会」代表の松中権(ごん)さんによると、「SOGIハラ」には、SOGIに関する差別的言動や、SOGIを理由とした職場での異動や解雇などが挙げられる。他者から勝手に暴露される「アウティング」なども含まれる。

 <同性婚訴訟・札幌地裁判決> 3月17日の判決で、武部知子裁判長は「法の下の平等」を定めた憲法14条違反を認定した理由について、「性的指向など人の意思によって選択・変更できないものに基づく区別は、真にやむを得ない区別であるかによって、その合理性を慎重に検討されなくてはならない」とした。