コロナ禍での作陶問う 15代沈壽官さん、福岡で展覧会

佐々木亮
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 薩摩焼宗家、15代沈壽官(ちんじゅかん)さん(61)の作品展が9日、福岡市大丸福岡天神店本館アートギャラリーで始まった。新型コロナ禍のこの1年余、「今の時代を生きる中で物をつくるということは何だろう」と考えながら生み出した新作を中心に、先人の作品を加えた約60点が展示されている。

 幾何学模様のような精緻(せいち)な細工が施された優美な「白薩摩」と、質実な「黒薩摩」。香爐(こうろ)や器、花瓶、置物が並ぶ。小さな昆虫や居眠りをする子どもをアクセントとしてあしらった品もあり、遊び心とともに命への慈しみを感じさせる。

 沈壽官さんは鹿児島県日置市市来町美山に窯を構える。地元でも昨年秋の窯元祭りが中止になるなど、コロナ禍が影を落としている。

 そうした中で物づくりの意味を自問したという。作品が窯から巣立ち、手にした人の心の傷を癒やし、力を与え、人間の可能性に改めて気づかせる――。「それらは全て明日を信じることにつながる」

 会場の一角には、明治~大正時代の先人の作品を展示した。沈家のルーツは、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に朝鮮半島から連れてこられた陶工だ。戦争や体制変革の時代にも、土に向き合い、伝統を守り、新たな技法に挑戦してきた。「どんな困難な時にも、窯の火を絶やさなかった。そうした先人たちに思いをはせたい」

 入場無料。15日まで(新型コロナ感染拡大防止のため12、13日休廊)。(佐々木亮)