コロナ・五輪… 不安払拭のチャンス、逸した首相

吉沢英将
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 首相と野党党首が一対一で向き合う党首討論が9日、2年ぶりに国会で開かれた。丁々発止のやりとりは少なく、質問と答えがかみ合わない場面もみられた。党首討論に詳しい識者はどうみたのか。

 「コロナや五輪への国民の不安を払拭(ふっしょく)するチャンスを生かせなかった」。成蹊大の高安健将(けんすけ)教授(比較政治学)は菅義偉首相の討論ぶりをそう評した。

 党首討論は、英国議会で首相と野党党首らが討論する「クエスチョンタイム」を参考にして、2000年に初めて正式に行われた。野党だけが一方的に質問する普段の国会質疑とは異なり、首相も野党側に質問できる「双方向性」が大きな特徴だ。

 「答弁を官僚に頼ることなく、与野党のリーダーが自らの言葉で時の課題や国の方向性について討論し、説得力や信頼感を競って有権者に示す『プレゼン』の場だ」と高安教授。「法案質疑のように合意形成を図ることが目的ではない『対決型』だからこそ、投票の参考になり、有権者の注目を集める」と言う。

 「初陣」に臨んだ菅首相について「相手を罵倒したりさげすんだりする言葉はなく、品位は保っていた」と評価する。

 一方で、菅首相の答弁で象徴的だったのが、立憲民主党枝野幸男代表が五輪の開催に伴うコロナの感染拡大リスクについてただした場面。菅首相は、1964年の東京五輪について自身の思い出を語った。「感染リスクの指摘に対し明確な方針を示して否定できず、質問を生かせなかった印象。なぜリスクを冒して五輪を開くかにも答えず不安は残った」と話す。「菅首相自身を出せたのは、五輪の思い出くらいだった。一言で言えば、覇気がなかった」

 野党党首については「与党と異なる代替案を示そうとした積極的な姿勢は見えた一方で、政権の問題を捉えたパンチ力に欠いた印象を抱いた人もいるかもしれない」と述べた。

 「党首討論を重ねることで、有権者により見えてくるものはあるはずだ」(吉沢英将)